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降水確率30%…傘はどうする? 数字に隠れた「雨のサイン」

気象予報士 伊藤みゆき

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6月下旬になって梅雨前線の活動が活発になってきました。日々、傘が活躍しています。

梅雨時は、「傘を持つか、置いていくか」「折り畳み傘にしようか、長い傘にしようか」と迷うことが多くなります。

そんな時、「降水確率」を判断材料にしている人が多いかと思います。でも、この「降水確率」は誤解されていることも多いのです。

「東京地方の6時~12時の降水確率は70%」というのは、

1.東京で午前中に4時間くらい雨が降る。止んでいる時間は短い。
2.東京の7割程度の地域で雨が降る。雨の降る地域が多い。
3.東京で「30%」の時よりも強い雨が降る。雷が鳴るかも。

などと、思われがちですが、正しくは「東京地方のどこかで(面積は問わず)、6時~12時までの6時間に、『1ミリ以上の雨が降る』と100回同じ予報が出された時に70回は降っています」という意味です。

実際、私ももう一度調べ直して、予報士仲間にこの表現でいいかを確認したほど、ハッキリ覚えにくい用語です。

つまり、降水確率の数字は、雨の強さ・降っている時間や範囲・雨の量などとは関係ないのです。

東京地方は「東京23区」と「多摩」を合わせた地域名で、そのどこかで「1ミリ以上の雨」が降るかどうか。10%なら、10%の予報が100回出されたときに10回降っていて、100%なら、100%の予報が出されて100回降っている…と、雨の降りやすさだけを示しているのです。

NHK気象・災害ハンドブックによると、降水確率予報は1980年6月から東京地方で始まり、1982年7月からは全国で発表されているそうです。

コンピューターではじき出された確率は36%などとなっていますが、四捨五入して10%刻みの11段階(0%から100%まで)で発表されます。

この11段階で、傘を持つか迷う確率は30%という意見が多く聞かれます。

個人的には、30%だと「カバンにゆとりがあれば折り畳み傘を持っていく」ことが多い気がします。どちらかというと、傘を持たない派です。

ただ、20%の時でも「前回、同じようなパターンで降られたな」と思い出した時は傘を持ち、放送でもそのことを伝えるようにしています。

具体的には、ある日の予報が「寒冷前線が通過するので雲が広がるが、雨が降るのは関東の山沿いだけ。東京は降水確率20%と低め」だったのに、東京も広範囲で雨が降ってしまったようなとき。きっと多くの人が傘を持たずに困ったはずです。数日後、また同じように寒冷前線が通過する時に「東京は曇りで20%」だったら、今回は傘を持ち、ラジオでも前回外れたことを伝えて、リスナーの方々の判断材料にしてもらいます。

さらに50%なら「面倒でなければ長い傘を持つ」ようにしています。

実は、50%以上と40%以下では、天気予報の表現に"ある違い"があるのです。

それは「所により」が付くかどうかです。

例えば、40%以下なら「曇り、昼過ぎから所により雨」となりますが、50%以上だと「曇り、昼過ぎから雨」となり、「所によらない雨」が予想されているのです。50%の時は傘を持っていて損はなかった、という実感が強いです。

そのほか、降水確率がそれほど高くなくても、他の地域や時間帯と比べてみると、隠れた「雨のサイン」を見抜けることがあります。

同じ「晴れ時々曇り、降水確率30%」でも、前日が10%だったり、隣の県が10%なら、ちょっぴり用心していた方がいいかもしれませんよ。

また週間予報で「曇り 降水確率40%」という日は、後で雨や晴れなどに予報が変わることが多いので、最新の予報を確認することをおすすめします。

ところで、せっかく持った傘、置き忘れてしまったことはありませんか?

日本洋傘振興協議会によると日本国内で消費されている洋傘は1億2000~3000万本と推計されていますが、東京メトロの2011年度(11年4月~12年3月)の忘れ物で、最も多かったのが傘。その数7万8331本でした。2位の袋類(紙・ビニール・布製など4万3420個)や6位の携帯電話(2万4862台)をはるかに超えて断トツの多さです。以前の4年を遡っても、傘は7万~8万本程度忘れられて1位だそうです。お供にした傘は、是非、連れて帰ってくださいね。

6月下旬は梅雨の折り返し地点、まだまだ降水確率とにらめっこの日が続きそうです。

伊藤みゆき
気象予報士。証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動中。

[nikkei WOMAN Online 2013年6月26日付記事を基に再構成]

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