靖国参拝「中国利する」 米下院外交委員長、訪日会談で
来日したロイス米下院外交委員長(共和党)ら米超党派議員団は17日、安倍晋三首相や日本の日米国会議員連盟の中曽根弘文会長らと相次ぎ会談した。ロイス氏は首相の靖国神社参拝について「中国を利するのではないか」と伝えた。靖国問題で日米韓の足並みが乱れ、中国が防空識別圏(ADIZ)の拡大を視野に入れた動きをみせていることを意識した発言だ。
ロイス氏ら米超党派議員団は日本訪問に合わせ、韓国や台湾、フィリピンなども訪れる。ロイス氏はカリフォルニア州の韓国系米国人が多い選挙区の出身。1月末にはロサンゼルス郊外に設置された従軍慰安婦を象徴する少女像に献花した。オバマ政権の外交政策にも影響力を持つ。
都内のホテルで会談した中曽根氏ら日本の議連メンバーは首相の靖国参拝は「不戦の誓い」と説明した。慰安婦問題に関しては「事実に基づいて冷静に議論することが重要だ」とアジア女性基金の設立など日本のこれまでの対応を説き、ロイス氏らは黙って聞いていたという。
中曽根氏らは韓国が日本海の呼称に「東海」を主張している問題や、竹島の領有権に関する日本の立場を説明する資料も渡した。ロイス氏は冷え込んだ日中、日韓関係に触れ「(お互いの批判の)表現を抑制することが緊張関係の沈静化につながる」と諭した。
首相は官邸でロイス氏らと会談し「厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境の下、日米同盟の重要性がかつてなく高まっている。議員交流を通じて一層、日米関係を深めていきたい」と強調した。両氏は同盟強化を確認しあうとともに、中国が東シナ海上空に設けた防空識別圏への対応を巡って日米が連携する必要性で一致した。岸田文雄外相も外務省でロイス氏らと会談し「4月に予定するオバマ米大統領の来日をしっかり準備したい」と呼びかけた。
米議会では知日派の下院議員らでつくる超党派の議員連盟が3月にも結成される。日本を専門に扱う議連が米議会にできるのは初めて。知日派の代表格だったダニエル・イノウエ元上院歳出委員長が2012年12月に死去し、日米の議員間交流には先細りの懸念があるため、新たなパイプを構築する狙いがある。
ロイス氏らとの会談にも、パイプ強化の期待がある。中曽根氏は「日本で政権交代もあり議員間交流は停滞していた。関係を再構築したい」と訴えた。ただ、ロイス氏が首相の靖国参拝に懸念を示すなど、歴史認識問題に絡めて米国で不満がくすぶっていることも浮き彫りになった。