EU、対ロシア強硬論高まる マレーシア機撃墜
【ブリュッセル=御調昌邦】ウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事件を受け、欧州連合(EU)内でロシアに対する強硬論が高まってきた。最大の犠牲者を出したオランダのルッテ首相はロシアのプーチン大統領との「非常に激しい電話協議」で協力を迫った。英独仏の首脳は20日、EUが22日に開く外相理事会で対ロ追加制裁の準備を進めることで合意した。
オランダ | 193 |
---|---|
マレーシア | 43 |
オーストラリア | 27 |
インドネシア | 12 |
英 国 | 10 |
ド イ ツ | 4 |
ベルギー | 4 |
フィリピン | 3 |
カ ナ ダ | 1 |
ニュージーランド | 1 |
マレーシア航空機の撃墜では約80人の子供を含む298人が犠牲になった。このうちオランダ国籍の乗客は193人を占め、オランダ国内では衝撃が走っている。
ルッテ首相はプーチン大統領に対して「協力する姿勢を世界に示す機会は終わろうとしている」と述べ、追加制裁への「最後通告」とも取れる発言をした。ロシアと経済関係が深いオランダはこれまで対ロ制裁に消極的だったが、国民感情の高まりを受け、強硬な姿勢に転じ始めた。
ルッテ首相は19日、英国のキャメロン首相とも電話で協議。英国も10人の乗客の犠牲者が出ており、両首相は「親ロ派が航空機を撃墜した証拠を踏まえロシアへの対応を再考する必要がある」との認識で一致した。英大衆各紙の1面には「プーチンの一味に殺された」などとする記事が相次いだ。
ドイツのシュタインマイヤー外相も自国民が犠牲となったことを受け、独紙の取材に「ロシアは解決に向けて真剣に取り組む姿勢をみせる最後のチャンスだ」と発言。英仏独の首脳は20日、電話で対ロ政策を協議した。
ウクライナ危機を巡っては、東欧諸国がロシアに対する強硬論を主張する一方で、西欧はロシアとの経済関係を重視し、強力な経済制裁などには慎重な姿勢を示してきた。これが今回の航空機撃墜を受け、西欧諸国の雰囲気は急速に変わりつつある。
EUは航空機が撃墜された前日の16日の非公式首脳会議で、対ロシア制裁を企業にも拡大する方針を決定した。その際はウクライナ東部での緊張緩和に取り組んでいないことを理由にしていたが、EU加盟国から多数の犠牲者が出たことで、当初の想定より強力な制裁に踏み切る可能性がある。
EUが制裁を決定するには加盟28カ国の全会一致が必要となる。これまでロシアへの制裁に消極的だったイタリアやギリシャなど南欧各国の対応にも注目が集まる。
オバマ米大統領は今回の撃墜事件は「欧州と世界への警鐘だ」と述べ、欧州に対して米国に同調して対ロ制裁強化に取り組むよう促した。キャメロン英首相も20日付の英紙に寄稿し、「ウクライナ東部で起きている現実と向き合おうとしない者がEUにはあまりに多い」などと指摘し、対ロ制裁の強化を主張した。