東武・竹ノ塚駅付近、開かずの踏切撤去へ
05年に死傷事故
2005年に遮断機の誤操作で4人が死傷した東武伊勢崎線・竹ノ塚駅付近の踏切が撤去されることになった。東京都足立区と東武鉄道が線路を約1.7キロメートルにわたって高架化する。完成予定は21年3月としばらく先だが、1時間のうち最大58分間も遮断される「開かずの踏切」が解消に向けて動き出すことで、周辺地域で街づくりの機運が高まりそうだ。
竹ノ塚駅の南北2カ所の踏切のうち、事故が起こったのは南側の踏切。遮断機の間の距離は33メートルもある。車庫に入る線路も含めて線路が5つあるため、比較的電車の運行本数が少ない午後2時台でも、踏切が開くまで平均して数分間は待つ。ようやく遮断機が上がって渡り始めると、途中でまた警報音が鳴り響く。
「とくに足腰の弱い高齢者にとって危険な踏切だ」と足立区の担当者。踏切近くで飲食店を営む70歳代の女性も「線路の向こう側から来客は全くない」と漏らす。開かずの踏切は東西の住民の往来を分断し、近くの商店は集客に不利だった。
事故は05年3月に起きた。当時は手動式の踏切だった。踏切保安係の誤操作で歩行者2人が死亡した。事故後、東武鉄道は踏切を自動化して警備員も配置し、再発防止に努めた。だが根本的に問題を解決するために「踏切撤去を願う地元住民の声が高まった」(区の担当者)。
鉄道の高架化や地下化は都が主体となって実施するのが通例だが、区の担当者は「都はほかの重要区間も抱え、優先順位を待っていると実現が先になる状況だった」と話す。そこで区が事業主体となって高架化することを決めた。
事業費は540億円。費用負担は東武鉄道が16%で、区が84%。(国の補助金や都の負担などで、区の実質負担は110億円)。
事業区間は1.7キロメートル。下り急行線から1線路ずつ高架化するため、21年3月ごろまで工事が続く。竹ノ塚駅の踏切解消も同時期になる予定だ。
区によると、電車運行時間帯の踏切2カ所の合計通行量は1日で車約4800台。歩行者(自転車含む)は約1万7千人。区の担当者は「踏切が無くなれば通行者が増える可能性がある。高架化で東西を自由に往来できるようになれば、地元商店街への高い経済効果も見込める」と指摘する。
竹ノ塚駅東側の渕江町会自治会連合会顧問の古庄孝夫さん(72)は「同じ中学校に通う同級生同士も、卒業後に東西の交流が途絶えてしまう。悲しい事故も発生し、都内にこんな不便な場所があっていいのかという思いを長年抱き続けてきた」と語り、「踏切撤去は地域にとって大きな喜び。地域全体で事業を支え続けていきたい」と話した。
遮断機は当時は手動式。電車が近づいているのに遮断機を上げたとして、同駅の踏切保安係が業務上過失致死傷罪の実刑判決を受けた。東武鉄道と東京都、足立区は協議のうえ、遮断機を自動化し歩道を拡幅した。
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