終盤唐突に差し挟まれる、被爆したとおぼしき、右手がずたずたになって、左手を少女と繋いで焼け野原を歩く女性。
これは、すずだ、と。
これは、本当の、すずだ。
普通に、当然のように、そう思った。
始めに言っておくんだけど、多分こういう解釈はあちこちで出てて、多分「原作読めば分かるけど、それはこうだよ」って否定されてると思う。実際、原作を読めばそれだけで氷解する、阿呆みたいな、とんちんかんな、暴走妄想なのだと思う。
別にそれでいい。
ただの、原作未読で、映画も一回しか見てない僕のモウソウだ。「トトロで、サツキとメイは実は死んでました」のたぐいの話だ。
ただ、僕には、そう見えてしまった、ということをメモっておきたかった。
終盤に唐突に現れる、焼け野原を歩く女性は、すずだ、と思った。
本当のすず。
現実のすず。
今、そうであるすず。
じゃあ今までのは全部夢だったのかな。すずの妄想だったのかな。彼女はとても夢見がちで、どこかぼんやりしているのだ。
でも、思い返すと、すずが妊娠したんじゃないか?ってなった時、医者から出てくる様子が映されたのみで、どうなったかの結論が何も出てこない。
勘違いだったのか?
食べ過ぎとかか?
生理不順か?
それとも……流産した?
それは、劇中では語られてない。まるで、触れてはいけないことのように、一切触れられない。
無事に月を重ね、広島に帰って出産し、育て、そして……そして原爆に遭い、子供をかばい、右手を失い、ほどなく死に、ウジに、ハエにたかられる世界と。
たとえば、お義父さんがすずと晴美を米軍機の銃撃からかばったあとに、ばったり倒れたまま起き上がらないシーンがある。直後、徹夜してたために爆睡しちゃったのだ、と笑い話になる。
たとえば、すずが海と軍艦を絵に描いてると、憲兵に目をつけられ、手帳は取り上げられ、家まで押しかけられて家族皆が詰問される。直後、このすずさんが間諜って、そんなあほな!と笑い話になる。
本当の未来は違ったのではないか。あの時、お義父さんは米軍機の銃撃で死んでいたのではないか。憲兵に目をつけられたすずは、そのまま連行、拷問の末、獄死したのではないか。
そうなった未来をすずは、棄却し、そうでない未来に選択し直していたのではないか。
どうやって?
そりゃあ、右手で。
だから、晴美の事故を、やり直せなかった。一緒に右手を失ったから。もう、左手でいがんだ世界しか描けなくなったから。
でも、じゃあ、あれは、一体なんなのか。原爆の焼け野原で、「本当のすず」が連れていた少女は。その子と「すず」が出会い、引き取るのは。
どうともしようがない。合理的な上手い説明など思いつかない。ただ、いくつか思うのは、もう世界線というか、時空は入り乱れてるように思う。原爆のエネルギーなのか、なんなのか。
すずは幻想の右手を取り戻して、いがんだ左手の風景は消えて、そして鬼いちゃんは南方で毛むくじゃらの化物になり、ワニの嫁さんをもらって、過去の人さらいとなって、すずと周作を出会わせる。
貧しい生家から裕福な家に奉公に出され、奉公先から出奔し、草津の家で座敷童になり、遊郭に拾われ、遊女となった、(そして「今」は空襲で死んでしまった)ひとりぼっちのりんの隣に、すずの幻想の右手は、自分の姿を描き入れる。
ならば、もうひとつの世界の流れの、原爆の惨禍に遭ったすずは、そうならなかった世界の流れのすずに、自分の娘を託すぐらいの事は出来たのではないだろうか、と僕は思うんだ。
Fateの改変かと思ったわ
どこが????
横だが、最初の3行が奈須きのこっぽい。
Fateネタなん?
それは俺も一瞬思ったヤツだけど、少なくとも子供の年齢は合わないよな。 原爆時点で3~4歳程度だろ。 妊娠疑惑から順調に成長して産んだとしても間に合わない。
こうゆうの結構嫌いじゃない。
自分から書いてるけどトトロとかポニョが死後の世界だとか言う妄言の類だろ。
俺も嫌いじゃない
・毎回にお笑いがオチにくるのは巻末目次後の掲載(「"巻末ほのぼのマンガ"というくくりで、」(ユリイカ2016年11月号P35、こうの))だった為。 ・妊娠騒動は、栄養不足...
メジャーな話だから特別もったいぶるような、すごい話のようなことを言うつもりはないんだけど、Keyの前身であるチームが作ったエロゲー「ONE~輝く季節へ~」についての有力な解釈...
どこかで見かけたネタのような気がする。
「原作未読」って言ってるけど、「鬼いちゃん」とか「いがんだ世界」とか映画では出てこなかった(音だけではそう認識しづらいが、原作では表記として出て来てる)言葉が入ってる...
「鬼イチャン」の表記は映画中に出てくる。 「いがんだ」は十分に聞き取れる。 りんの生い立ちは確かに微妙。俺は原作読んでたから普通に分かったが。
これよんではじめて知った そうか、冒頭の人さらいの籠の中であったあいつが周作だったのか 一度あったことがあるみたいなこと周作がいってたけど、深く考えてなかった
このレビューほんと好きでなんで全然伸びねーんだろって思ってるんだけど、「この世界の片隅に」って作品タイトルが入ってないからレビュー探してる人に届かないんだなーって思っ...
自演うぜーんだよゴミ
ブコメに「自分も最初そう思った」的なのが結構あって、あーやっぱそう思う人多いんだって思った。俺もここまでは考えてなかったけど、最初あれ絶対すずちゃんだとおmった。
なるほど《幻想殺し(イマジン・ブレイカー)》の右手ならぬ《幻想創造(イマジン・メイカー)》の右手か。 北條△か。
※この世界の片隅にのネタバレ含みます 元増田とは少し考え方が違いますが、選ばれなかった過去という話を明確に打ち出しているので、あり得たもうひとつの世界というのは重要な要...
海苔でくるりときれいに閉じるという指摘、非常に面白い。