サクレを数十年単位で存在する地縛霊にひとさじあたえれば(あ もう いいかな)と力が抜けて行くべき場所に行くか レモンの種までも味わい尽くしたいとガッツを起こしさらなる怨霊と化すかのどちらかだろう
もちろん天国では毎日サクレの全フレーバーが饗される サクレは天上に奏上される菓子だからだ
この文章はサクレに感謝を捧げる文章を病床でつづったものである
今の私は謎の高熱と嘔吐感に悩まされて床に伏せっている PCR検査はしたがコロナではないそうだ
コロナにはかかったことがある いっそコロナであれよ そんな不謹慎さと八つ当たりがないまざった気持ちすら湧いてくる 原因がわからない病と戦う人の不安感が小指の爪の先の先ぐらいわかった気がした 募金します
今回の病はとにかく固形物を受け付けない ゼリー飲料すらダメで吸ってはもどし吸ってはもどしを2~3回くり返したあと、ひたすらスポドリや麦茶などを飲んでしのいでいる
3日目にたどり着いたのがサクレのレモン味だ。いちおう説明すると ザクザクのかき氷にほどよいシロップを染み込ませて 輪切りにしたフルーツを一枚ぺろんと乗せたカップアイスである
もちろんそのまま食べてもおいしい しかし今の固形物が受け付けない私がサクレをぞんぶんに楽しむための方法がある
まずちいさいボウル状の皿を用意して輪切りにされたレモンを置く
そしてサクレをけずりつつ下に敷かれたレモンをちょっとだけ押し潰してほろ苦さとすっぱさのある果汁を出しながら食べる これが私のたどり着いた答えだった
サクレがすばらしいのは病床で不足しがちなあまい すっぱい にがい このみっつがひとつで味わえるところだ この比率も重要でにがい すっぱい あまいの比率ではサクレはロングセラーにはならなかっただろう
レモンシロップがたっぷりと染み込んだ氷をシャリシャリと繊細な音を立ててすこしずつ削るのに 食べるときは奥歯をぞんぶんに使ってガリガリと食べる これがたまらない
しっかりと噛んだサクレは涼やかな液体となってのどをうるおし 私を苦しめる固形物としては残らない しかしちゃんと食べた!という実感があるのだ
こんなに喜ばしいことがあるだろうか
サクレは思い出させてくれた ゼリーすら食べられないと鬱々としていた私が人間であることを サクレは私にとってリコに対するミーティのようなものだ
追伸 えげつない頭痛も吐き気も直前に読んで観たばかりのメイドインアビスで(リコちゃんもがんばってたもんな……)と勇気をもらえた 治ったら烈日の黄金郷を観ます