ペンライト演出の起源には意外な歴史的背景があります。それは、遥か昔のキリスト教のミサにまで遡ります。
中世ヨーロッパでは、ミサが非常に重要な宗教儀式として行われていました。このミサの中で、信者たちは一斉に蝋燭を灯し、その光を聖なる象徴として用いていました。特に夜のミサでは、闇の中で揺らめく無数の蝋燭の光が幻想的な雰囲気を作り出し、信者たちの心を一つにしました。
時は流れ、現代の音楽シーンに目を移します。1980年代後半、日本の音楽業界は新しい演出を模索していました。その中で、あるアーティストがヨーロッパ旅行で訪れた大聖堂のミサの光景を思い出しました。蝋燭の光が作り出す神聖な雰囲気と一体感に感銘を受けた彼は、これをライブで再現できないかと考えました。
しかし、蝋燭をライブ会場で使用するのは安全上の問題があります。そこで彼は、化学発光のペンライトに着目しました。このペンライトは、安全に光を楽しむことができ、かつミサでの蝋燭のように観客全体で一体感を演出できる道具として最適だったのです。
初めてライブでペンライトが導入された時、その光景はまるで現代の「光のミサ」のようでした。観客全員が一斉にペンライトを振ることで、音楽と光の融合が実現され、会場全体が一つに繋がる感動的な瞬間が生まれました。
この新しい演出は瞬く間に広まり、他のアーティストやグループも次々とペンライトを取り入れるようになりました。そして、現在ではライブの定番として定着し、色とりどりのペンライトが織りなす光の海は、ファンとアーティストが一体となる象徴的な光景となっています。