外務省の若手官僚との間で、最近よく話題にのぼるのが宮崎駿監督の「風立ちぬ」だ。零戦を設計した堀越二郎の半生をたどる映画だが、省内の視聴率は実に高い。設計した零戦は戦火に散り、結核に倒れた恋人とは悲痛な別れを余儀なくされても、主人公は「あなたは生きて」と背中を押される。厳しい外交の現場に立つ外交官は共感を口にするが、同時に違和感を唱えるのが宮崎氏の憲法観だ。集団的自衛権の行使容認検討など、憲法の変革期に携わる立場として、氏が映画でたどり着いた境地とのギャップに戸惑うという。 映画に零戦の戦闘シーンはなく、二郎が「美しい飛行機」の設計にこだわる様子が描かれる。二郎は昼夜飛行機作りに没頭する一方で、結核の療養地から抜け出した恋人・菜穂子との短い夫婦生活を守り抜く。 特に印象深いのがラストシーンだ。夢の世界か、青空に緑の風がたなびく草原で、おびただしい零戦の残骸を前に「一機も帰ってこなかった」とつ