その夜私たちは深く濃い闇の中でハンモックに横たわり、眠れないままで過ごした。物悲しい虫の音が響き、兵士たちは戦闘の準備をしていた。ユーカリの焚き火から立ち上る煙の合い間に、オレンジ色の火に照らされて時折ライフル銃が光るのが見えた。 M16自動小銃か中国製の携行式ロケット弾に約10キロの弾薬、ハンモック、歯ブラシ、鍋、米を詰めた緑色の細長い布の袋を、それぞれの兵士が携帯していた。緑の袋は太った短いヘビのように、首か腰に巻きついていた。行軍中にはその米のほかに、虫やヘビや魚を捕らえて食べることになる。 ほとんどの兵士が裸足か、アランヤプラテートの市場で買った派手な色のビーチサンダルを履いて歩いていた。ロールアップしたズボンを履いている兵士もいれば、赤と白のチェック柄のクロマーと呼ばれる木綿の布を腰に巻いている者もいた。 それとは対照的に、士官たちはかっちりとしたアメリカ製の密林仕様の軍服を着用
私にとって初めての戦争体験は(あやうく人生最後の体験になるところだったが)、自分の血と引き換えに買ったものだった。その体験のクライマックスは、はるかなカンボジアの谷間で、ヤシの木々に飛び散る人間のおびただしい血と肉片で彩られた。 私は24歳で、怒りと情熱に血をたぎらせた貧乏なフリーのカメラマンだった。気高く勇気ある人々に刺激を受けて夢を抱いた私は、89年の乾季の始めに、タイの首都バンコクのモーチット・バスステーションから急行バスの屋根の上に乗り込み、カンボジアとの国境に近いアランヤプラテートというみすぼらしい町に向かって255キロの道のりを進んだ。 私たちが「アラン」と呼んでいたその町は、スパイや看護婦、武器商人、ゲリラ、娼婦、放浪者、詐欺師などあらゆる人々でごった返していた。私はカンボジアを占領していたベトナム軍との戦いに向かうカンボジアのレジスタンスのグループの一つと落ち合うことになっ
映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』を見た後に、私と同じ感想を持った人もいるだろう。40代の女優が、40代の俳優と同じギャラを稼ぐには10代の少女のような容姿を保ち、ギャルっぽい服をまとうしかないなんて......。そんな外見至上主義の文化は法律で取り締まるべきだ、と。 実際、そう主張している法学者がいる。スタンフォード大学法科大学院のデボラ・ロード教授は、新著『美の偏見』で外見による差別がアメリカでいかに横行しているかを詳細に記している。ロードはこう提案する──外見による差別を、性差や人種差別と同等に深刻な差別と見なす法律を制定するべきだ、と。 それが現実になれば、セクシーな制服が売りのファストフードチェーン、フーターズが、太り過ぎを理由にウエートレスをクビにしたことは違法になる(5月に解雇されたウエートレスは、体重が60キロだったこと以外に理由は考えられないと同社を訴えた)。 カジュ
9歳のときに書き始めた日記をめくると、最初のページにこうある。「私は9歳(もうすぐ10歳)で太ってる。47キロよ!」 「私は9歳(もうすぐ10歳)で、一角獣が好き」でもなければ、「私は9歳(もうすぐ10歳)で、パパと犬のプリシラとフロリダに住んでる」でもない(どれも事実なのに)。10歳足らずの子供が既に、太っていることこそ自分の最大の属性だと知っていたのだ。 だから私は、ミシェル・オバマが始めた子供の肥満撲滅キャンペーンについて見聞きするたびに、胸が締め付けられる。この手の動きは必ず肥満児への攻撃につながるからだ。肥満児は、アメリカに広がる偏見に抵抗すべく必死で戦っている。ファーストレディーが主導する活動によって、これ以上の罰を受ける理由はない。 小児科医によって肥満の宣告を受ける以前の私は、活発で運動好きな子供だった。だが成長するにつれて、「デブは運動が苦手」という世間のイメージを知った
Can We Talk? 目と口しか動かない作り物の顔で毒舌を吐きまくるお下劣タレントに文化的価値を見出したドキュメンタリー お下劣で不愉快極まりないけれど、自分のことまで笑い飛ばす。それが、コメディエンヌのジョーン・リバーズ(76)のやり方だ。 リバーズの顔は整形手術を重ねているから、しわがまったくない。チョコレートバーのスニッカーズの広告では、顔のアップにこんなコピーが躍る。「おなかがすくと、しわが出ちゃうの」 プロのギャンブラー、アニー・デュークを罵倒したこともある。「ポーカーで飯食ってるだなんて、人としてどうかと思うわ!」 無鉄砲で奔放なリバーズだが、文化的価値なるものはあるのだろうか。十分にある、と教えてくれるのが、今年初めに公開されたドキュメンタリー『ジョーン・リバーズ──ある傑作』だ。 リバーズは下ネタ交じりの下品なトークで、毒舌コメディエンヌの先駆けとなった。しかし、このド
リズ・キャナーのドキュメンタリー映画『オーガズム・インク』に登場するシャーレッタは、目を背けたくなるほど気の毒だ。 いま60代の彼女の悩みは、夫との性行為でオーガズムを感じないこと。そこで脊椎に電極を埋め込んで性的快感を得る装置「オーガズマトロン」の被験者になった。ところが、スイッチを入れても左脚がピクピク動くだけだった。 装置を外したシャーレッタが、キャナーに嘆く。「私って、異常なだけじゃなく病気なのね」 しかし彼女は、ほかの方法ならオーガズムを得られるという。ならば、とキャナーは言った。あなたは少しも異常じゃない、女の10人に7人は性交じゃ「感じない」のだから、と。そう聞いたシャーレッタは笑顔になり、じゃあ今のままでいいのね、と納得する。こんなふうに堂々と言える女性が多ければ、映画の完成までに10年もかからずに済んだろうに。 5月27日にニューヨークで初上映された『オーガズム・インク』
ウガンダでW杯観戦中の市民を狙った爆弾テロは、ソマリアのイスラム武装勢力「アルシャバブ」の犯行とみられ、さらに近隣諸国が襲われる可能性がある ウガンダの首都カンパラで11日夜、サッカーワールドカップ(W杯)の決勝戦を観戦していた市民を狙った2件の爆発事件が起こり、少なくとも74人が死亡し、70人以上が負傷した。ウガンダ警察は、国際テロ組織アルカイダと関連があるソマリアのイスラム反政府勢力「アルシャバブ」の仕業と見ている。事実ならば、アルシャバブがソマリア国外で実行した初めての攻撃となる。 最初の爆発は、人気のバーやレストランが集中する地区にあるエチオピア料理店で起こった。直後に2回目の爆発が、多数のサッカーファンがW杯を観戦していたラグビークラブで起こった。両方とも多くの外国人が集まる場所で、アメリカ人1人をはじめ多くの犠牲者が外国人だった。 ウガンダとブルンジの両国はアフリカ連合(AU)
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