少なくとも2年以上前から、亀井聖矢の日々はショパン一色だった。 今年10月にワルシャワで開催されるショパン国際ピアノコンクールに挑戦することが、亀井を次なるステージに導くはずだと、誰もが信じて疑わなかった。しかし、4月に行われた予備予選でまさかの落選。後に「前夜から心も体もこの世のものとは思えないような状態だった」と語ったほどの異様な緊張にのまれて、思うようなパフォーマンスができなかったのだろうか。長年焦がれてきた本大会に進むことなく、亀井のショパン・コンクールは唐突に終わってしまった。 何が足りなかったのか、落選の報を受けた後は眠れぬ日々を過ごし、一時は「ピアノをやめる」ことすら考えたという。だが亀井にはそうできない理由があった。落ち込む間もなく、ベルギーでもう一つの挑戦が始まっていたのだ。 ショパン・コンクールと並び、世界三大コンクールの一つと称される難関、エリザベート王妃国際コンクー
