観光列車に乗って窓の外に目を向けると、地元住民が手を振ってくれていたり、駅ではボランティアがゆるキャラでお出迎えしてくれたりすることがある。多くは乗客の気分を盛り上げるための自発的な行動だが、鉄道会社に頼まれて行っているという例も少なくないようだ。そういう微妙な空気は乗客の側でも伝わる。 しかし、この日の地元の歓迎ぶりは、ほかのどんな列車の沿線よりも熱気に満ちていた。2011年の東日本大震災で被災し不通になっていた三陸沿岸の宮古と釜石を結ぶ鉄路が、3月23日に運行再開したのだ。 8年を要した復旧 11時40分、釜石から宮古に向け、公募で選ばれた一般客40人を乗せた記念列車が走り出した。途中の鵜住居、大槌、陸中山田で歓迎セレモニーが行われると聞かされていたが、すべての駅で大漁旗や郷土芸能による出迎えがあった。車窓に目を向けると、年配の夫婦が住宅のベランダでうれしそうに手を振り、列車を追い掛け