日本学術会議は、設立当初から共産党の影響力が強い。60年前に私が東大の助手になったときは、よく分からないうちに先輩の命令で会員の選挙運動に駆り出された。副会長を務めていた平成20~23年も、そんな雰囲気があった。 彼らは声が大きく、長々と発言して、何とか全体を自分たちの方向に引っ張っていこうとする傾向がある。そういった人たちの数は多くはなく、中道派の方がずっと多いが、あまり積極的に発言しない。軍事研究を忌避した声明も、そんな大きな声の影響だろう。 ナショナルアカデミー自体は絶対に必要で、会員の多様性も欠かせず、思想信条で選んではいけない。だが、妥協を拒否する「唯我独尊」や一面的な見方が横行してはならず、すべての政治的な勢力から独立すべきだ。 かつて吉川弘之会長の時代に「総合的、俯瞰的な見方」を重視したのは、そのような考え方からだったが、近年は忘れられた感があった。今回の報告書を受け、学術会