病床の妻を自らの手であやめた元商社マンが「最期の場所」に選ぼうとしたのは、夫婦の思い出の地だった-。東京都世田谷区のマンションで7月9日、片桐早智子さん(75)の首を絞めて殺害したとして、夫の健躬(たけみ)容疑者(79)が警視庁に殺人容疑で逮捕された。犯行後、飛び込み自殺を図った隅田川が流れる日本橋はかつての勤務地の近くで、早智子さんとも何度も訪れた場所。東京消防庁に救助されて一命を取り留めた健躬容疑者は「妻とは以前から『一緒に死のう』と話していた」と打ち明けた。長年連れ添った妻を介護する中で、人知れぬ葛藤を抱えて生き抜いていた。