ゴキブリはとてもいやなものだが、わたしたちには、あらためて考えておかなければいけないことがある。彼らは、危険を察知すると、逃げる習性がある、ということについてだ。やつらは逃げる。人間をこわがっているのだ。現時点では。わたしたちは、それを当たり前だとおもっている。しかし、これが仮に、逆だったらどうか。想像するだけでおそろしいことになる。 「人間を見ると、襲いかかってくるゴキブリ」 書いただけで、戦慄が走る。たとえば、台所で見かけたゴキブリ。ものすごいスピードで、こちらに向かってくる。がさがさがさ。足にかみついてくるのだ。そんなことになったら、わたしたちは、悲鳴をあげて逃げだすしかない。完全に立場逆転である。そろそろ、ゴキブリたちも、相談をはじめているのではないか。 「ひょっとすると、人間は、俺たちにびびってるんじゃないのか」 「こっちから、襲ってみるのはどうだろう」 「意外に、効果あるかもな