それはまだ夏の暑いときでした。 「ガク、12月に引退試合やるから日本へ帰ってきてくれない?」 電話を受けたその少しまえ、ぼくの働いているカナダのクラブへとつぜん訪れ、関わるひとすべてを魅了して帰ったレジェンドからの電話に驚くばかりでした。 中村憲剛の名前は太平洋を渡り、あまりにも大風呂敷をひろげすぎな「PACIFIC FC」と名乗るプロクラブにもしっかり刻み込まれています。いまやスカウトは本気で日本人選手を探し、サポーターは事あるごとに「ケンゴはカナダで現役復帰しないのかな」と話します。それがどれだけ本気かは、PACIFIC FCの本拠地に掲げられている日の丸が説明をしています。 「ガク、12月に引退試合やるから日本へ帰ってきてくれない?」 即答しました、行きますと。 今回は、おそらく日本サッカーの歴史のなかでも最もカオスであった「NKF – 中村憲剛引退試合」の企画について記載していきま