あの井上尚弥がまさかの出血――。 11月7日、さいたまスーパーアリーナで行われたWBSSバンタム級決勝、井上尚弥(大橋)とノニト・ドネア(フィリピン)の激闘で、井上がドネアの左フックを食らって右まぶたから血を流した姿は記憶に新しい。 圧勝を重ねてきた井上がキャリア初の出血というピンチに見舞われ、重要な役割を果たしたのがチーム井上のカットマン、佐久間史朗トレーナーだ。今回はあの一戦における佐久間トレーナーの動きを通して、カットマンの仕事を紹介したい。 ボクサーは試合中、パンチをもらい、頭をぶつけ、顔に傷を作り、血を流す。それを止めるのがカットマンの仕事だ。 目の上を切ったり鼻血を流したりすることが多いが、額や頭部、耳、口びるなどが切れることもある。あらゆる傷がカットマンの守備範囲だ。 井上が強すぎて出番がなかった。 止血はセコンドに入るトレーナーの仕事の1つであり、たいていはトレーナーがカッ