生かされていること、生きること 『夕凪の街 桜の国』 2007年07月16日 [評者]落合早苗 この夏公開予定の映画の原作『夕凪の街 桜の国』(こうの史代著/双葉社)は、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、ならびに第9回手塚治虫文化賞新生賞をダブル受賞した作品だ。2003年9月『夕凪の街』が、翌2004年8月には『桜の国(一)』が、それぞれ読み切り作品として双葉社のコミック誌「漫画アクション」に掲載され、『桜の国(二)』は同年10月の単行本発行時に書き下ろしとして収録された。 『夕凪の街』では原爆投下から10年後の広島を舞台に(映画では13年後という設定らしい)、『桜の国(一)』では昭和の終わりの東京で展開される一見別のストーリーだが、『桜の国(二)』でこの二つのストーリーが交錯するという仕掛けである。構成の巧みさもさることながら、原爆という重いテーマを、原爆投下直後の生々しい描写を