第三に、ウィトゲンシュタインをどうしたいのかという疑問が残る。私から見て、飯田の世代の日本人哲学者たちがウィトゲンシュタインに対して示す畏敬の念は十分には実感しにくいものである。 以下はあくまで私見だが、一般の読者のために説明すると、日本人の分析哲学者はおおよそ3世代に分けることができると思う。関東圏では、第一世代は戦後の日本で分析哲学を築いた、石黒ひで(元慶大)、大森荘蔵(元東大駒場)、黒田亘(元東大本郷)といった人たちである。第二世代はその弟子にあたり、現在の哲学界の主力部隊である、飯田隆(慶大)、丹治信春(日大)、野矢茂樹(東大駒場)など。さらにその人たちに学んだ若手の第三世代には、柏端達也(千葉大)、金杉武司(高千穂大)、松阪陽一(首都大)等がいる。私もこの中では第三世代に属する。(なお、ここにあげた人々は私がたまたま思い出しただけであり、あげなかった方々と何か比較したわけではない