2009年5月30日 奇蹟は起きない、蜂起が起こる ケン・ローチ監督『Looking for Eric』。題名のエリックとは元マンチェスター・ユナイテッドのサッカー選手エリック・カントナであり、実名で出演している。メディアでは同映画をサッカー映画として紹介する向きもあるようだ。なるほど、イギリスのありがちなフーリガン映画か、と思うかもしれない。だが全然ちがう。 近年の『麦の穂をゆらす風』をはじめとするケン・ローチの映画作品が、幾度となく歴史的なアナキズムをフィクションとして描いてきたように、今回もまた純然たるアナキスト映画である。ただし、『Looking for Eric』で描かれているアナキズムは、監督が公然と支持するオリヴィエ・ブザンスノらの「新たなる反資本主義党NPA」のアナキズムというよりも(主人公はイギリスの郵便局員である)、むしろオルターグローバリゼーション・シーンで活躍するブ