木曽川の源流に位置する村で起きた「巨額脱税」事件。その舞台は寂れた食堂だった。真面目で実直だと評判の夫妻だっただけに、地元住民は「まさか」と口を揃える。だが、国税当局は見逃さない。 村は噂でもちきりに 江戸と京都を結んだ中山道六十九宿—。その真ん中に位置する「薮原宿」は江戸時代、木曽路を行く旅人が疲れを癒やす宿場町として栄えた。 木曽川沿いにある小さな集落は、現在、長野県木曽郡木祖村薮原と名前を変えた。江戸時代の活気を思い起こさせる風情は、ほとんど残っていない。旧中山道と並行するように走る国道19号線が整備されてからというもの、宿場町を通る人はめっきりと減り、村は廃れていく一方だ。 地方に行けばどこででも目にしそうな、寂れた宿場町。そんな村で起きた巨額脱税事件が、このところ村人たちの格好の話題となっている。 発端は11月16日付の朝刊だった。木祖村で食堂を経営する夫妻が母親から3億3000