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本稿では,宇宙エレベーターの建設費を10年で回収できると仮定し,宇宙デブリ衝突による宇宙エレベーターの破断を考慮して,10年後の宇宙エレベーターの残存率を評価した結果を示す.その結果,宇宙エレベーターがその建設費を回収できるまで残存するためには,宇宙デブリ衝突による宇宙エレベーターの損傷を最小化するような冗長系だけでなく,現在の衝突フラックスと比してほぼ0%にまで宇宙デブリ環境を改善しなければ実現不可能であることが分かった.
Online ISSN : 2185-8314 Print ISSN : 1340-7619 ISSN-L : 1340-7619
Online ISSN : 2424-1601 Print ISSN : 1342-4726 ISSN-L : 1342-4726
本稿ではエドワード・サイードの言う対位法的な読解により、北海道文学史を再考する。具体的な作品としては向井豊昭「御料牧場」(一九六五)を中心に扱い、向井山雄や矢沢信明ら作中にて実名で登場する人物との関わりも論じるが、その前段階として北海道文学の嚆矢とされる国木田独歩「空知川の岸辺」ほか戦前の諸作、北海道文学の研究史、さらには「北海道一〇〇年」に象徴される「開拓」イデオロギーを、セトラーコロニアリズム批判の視点から検証していく。そうすることで、「自然との共生」という常套句のもとに不可視化されてきた、アイヌの強制移住に代表される和人の歴史的加害の位置を探り、今なお続く差別と暴力に向き合うための視座を可視化させる。
デジタルアーカイブに搭載された資料画像から、テキストデータや図版といった情報を自動抽出し、利用者に提供することは、AI技術(機械学習技術)の高度化に伴って、全文検索対応やアクセシビリティ改善の観点で近年注目を集めているアプローチである。国立国会図書館はNDLラボという実証実験の場を有している。これまで機械学習技術を応用した情報抽出手法の実験的な機能の実装と公開を行い、開発の過程で得られた知見や利用者の反応を国立国会図書館デジタルコレクション等の要件検討に反映してきた。本稿では情報抽出技術の解説にくわえ、NDLラボで実際に各技術を組み込んだ実験サービス等を運用して得られた知見を紹介する。
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Online ISSN : 1884-6580 Print ISSN : 0037-3826 ISSN-L : 0037-3826
Online ISSN : 1884-2380 Print ISSN : 0387-3358 ISSN-L : 0387-3358
東北大学では研究成果のオープンアクセスの推進のため,2022年に国内初の転換契約をWiley社と締結し,その後,2024年までに三大学術ジャーナル出版社全てと転換契約を行った。また若手研究者支援を目的に転換契約以外のOAについて本学独自のAPC支援事業を実施し,これらの事業の広報や情報の集約を行うことでOA推進に関する周知とその効果の分析を進めている。
生存時間解析・信頼性解析は,患者の生存時間や機器の故障時間など,ある個体に対して特定の事象が生起するまでの時間に関するデータを扱う,統計学の一分野である.本稿は,生存時間解析・信頼性解析に用いられる統計モデルの歴史的背景や統計的性質について,初学者向けに書かれた総説である.生存時間や生存関数,ハザード関数などの基本的な生存時間解析の道具や概念を定義し,それらの統計的性質・解釈を解説する.また,指数分布・ワイブル分布・対数正規分布などの,一般的なパラメトリックモデルや,Cox比例ハザードモデル・加速故障時間モデルなどの回帰モデルについて解説する.競合リスクモデルについても簡単に触れる.本稿で使用したデータ,式の導出,解析に使用したRコードを付録に与える.
量子力学では,時間発展の途中で物理量を問うことが困難である.ハーディー(L.Hardy)のパラドックスはこれを顕著に示した例だが,パラドックスに陥るのは,実際に測定できないものを議論しているからだと考えられてきた.測定自身によって時間発展が乱される為,そもそも検証ができないのだ.ところが,近年アハラノフたちによって弱い量子測定が提唱されて以来,時間発展を乱さずに測定はできないという反論が必ずしも正しくはなくなった.我々は弱い量子測定を用いて実際にハーディーのパラドックスを観測した結果,測定器がパラドックスを反映した値を示すのを確認した.この解説では,弱い量子測定と我々の実験結果について説明する.
本稿の目的は、女性の性的自立の可能性について探究を行うことにある。そのために、通常は女性の性的自立と対立するものとされるマゾヒズムを取り上げ、女性のマゾヒズムが性的自立に導きうる可能性を検討する。女性の積極的なマゾヒズムの実践が現状の権力構造を脱構築する可能性を検討し、あわせて、マゾヒズムのより深い理解へ至るよう努める。ジェンダーの文化的偏向によって、男性のそれとは異なり、女性のマゾヒズムは自然本性的なものとされてきた。自然に依拠したこの種の議論は、当然のことながら再吟味されねばならない。しかしまたこのことは、必ずしも女性の性的なマゾヒズムが日常の権力関係を単純に反映していることを意味しない。サドマゾヒズムが権力関係を利用するというように考えると、パット・カリフィアのように、サドマゾヒズムは「権力関係のパロディ」と定義することもできよう。そこで本稿では、パット・カリフィアのこの考え方を、女
Online ISSN : 2423-8872 Print ISSN : 0029-0181 ISSN-L : 0029-0181
Online ISSN : 2187-1590 Print ISSN : 2186-4942 ISSN-L : 2187-1590
東京学芸大学附属図書館では,学部新入生対象の授業「入門セミナー」の1コマにおいて,附属図書館職員が講師となり,図書館の利用方法や文献検索などを説明する情報リテラシー教育を行ってきた。その内容について,2023年度に「大学の学びのサイクルを意識した情報リテラシー教育」をテーマとして改訂を行った。改訂の経緯とその内容について報告するとともに,当館での実践を通して得られた知見を踏まえて,大学図書館における情報リテラシー教育の今後のあり方について考察する。
Imagine a situation in which a patient asks a doctor “Why must I die?” and the doctor stands there stunned. Physicist Schrödinger claimed that scientists unconsciously put “I” as the subject of recognition outside the objective world. Both doctor and patient put “I” as the subject of recognition outside the objective world. In medicine as a science, doctors eliminate the fact that each patient is
本論文は、反出生主義の精緻化を目指し、その上で切り捨てられることになる感情、特に〈生まれてこない方がよかった〉に注目し、そのケアも同時に目指したものである。反出生主義を「人間、場合によってはすべての有感生物から苦痛を取り除く思想」とし、現代反出生主義が感情の範疇である可能性と理性と論理だけで組み上げた反出生主義の冷酷さ示す。そして理性によって退けられる感情である〈生まれてこない方がよかった〉を3つの視点からケアする道を探っていく。その3つの視点とは「基本的自尊感情」、「いるからいる」、「死にたい」へのケア方法の応用である。
近年,児童虐待と「傷つく脳」との関連が脳画像研究からわかってきた.例えば,暴言虐待による「聴覚野の肥大」,性的虐待や両親のDV目撃による「視覚野の萎縮」,厳格な体罰による「前頭前野の萎縮」などである.虐待を受けて育ち,養育者との間に愛着がうまく形成できなかった愛着障害の子どもは,報酬の感受性にかかわる脳の「腹側線条体」の働きが弱いことも突き止められた.こうした脳の傷は「後遺症」となり,将来にわたって子どもに影響を与える.トラウマ体験からくるPTSD,記憶が欠落する解離など,その影響は計り知れない.しかし,子どもの脳は発達途上であり,可塑性という柔らかさをもっている.そのためには,専門家によるトラウマ治療や愛着の再形成を,慎重に時間をかけて行っていく必要がある.一連のエビデンスについて社会全体の理解が深まることで,大人が責任をもって子どもと接することができ,子どもたちの未来に光を当てる社会を
動脈管早期閉鎖(premature closure of ductus arteriosus:PCDA)の原因として母体への非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti- inflammatory drugs:NSAIDs)が知られているが,近年ポリフェノールも原因となることが報告されている.ポリフェノール含有飲料が原因と思われるPCDAが疑われた1例を経験した.症例は在胎37週3日,2,730gで出生した一絨毛膜二羊膜双胎第2子.生後2時間から酸素化不良を認め,その後も酸素需要が続くため日齢1にNICUに入室した.胸部X線,12誘導心電図で右室肥大が認められ,心エコー図では動脈管閉鎖,心室中隔の平坦化,心房間の右左短絡が認められ,PCDAが疑われた.妊娠中にNSAIDsの服用はなかった.あずき茶とルイボスティーを連日飲用していたことが判明し,PCDAの原因としてこれらに含
本研究の目的は、公共図書館をだれが利用しているのか、またそれはだれに利用されるべきと考えられているのかについて、平等利用の観点から大規模ウェブ調査の分析をもとに検証することである。分析の知見は次のとおりである。第一に、図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていた。第二に、非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、利他的に公共図書館の存在意義を重視していた。
One of the pivots of the world payments mechanism for the forty years before the First World War was Britain's ability to maintain a deficit on her visible trade with Europe and the United States, a deficit which she balanced by means of a surplus with Asia. This Asian surplus, on visible trade, came largely from exports of Lancashire's cotton textiles to the Asian markets. In India, as early as 1
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