以下に公開するのは、昨年の秋に僕にとってはじめての本格的な文芸評論の連載第一回として脱稿し、その後、ある雑誌の編集者とやりとりをしながら、連載開始の機を窺ってきたものです。何度か細かい書き直しを求められ、その都度スケジュールをやりくりして応じてきましたが、最終的に自分として、同編集者との信頼関係はもはや維持しがたいと結論するに至りました。また、最後に言及されている朝吹真理子『きことわ』が芥川賞を受賞したこともあり、脱稿後、半年を経て続きを書くことも出来ないまま(当初は月刊誌での連載の予定)、僕がそもそもしようとしたことからすると、内容的なタイムラグが埋め難くなってしまったと思われたので、稿料生活者としては忸怩たる思いですが、ここに全文を公開する次第です。 公開に際しては、編集者の要望に沿って行なっていった改稿後の最新ヴァージョンではなく、最初に書いたママに戻しました(ひとつだけ挙げておくと