娼婦。その存在はいつの時代も様々な点で男たちを惹きつけてきた。実直な青年と高級娼婦の愛を描いたデュマ・フィス著『椿姫』や映画『プリティーウーマン』などの作品に私も惹きつけられた。これらの作品に出てくる娼婦は、自堕落な生活を送りながらも本当は純真な心を奥底に秘めた哀れな社会の犠牲者として描かれていることが多い。 多かれ少なかれ、男というものは女性に対して神秘的なものを感じている。金銭の対価として、その美しい肉体を差し出す女性たちに男は下卑た視線を向けながらも、彼女たちがその神秘性と、可憐で清らかな心を失わずにいて欲しいと願っている。 だが、このような虚像をはぎ取った実際の娼婦とはどんな人々なのであろうか。本著は日本に関わる娼婦たちを日本国内に限らず、タイ、チリ、シンガポール、インドネシアと世界各地で取材した力作である。 家族のために異国の地へ 単純に言ってしまえば、彼女たちが苦界に身を沈めた