仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心憂く覚えて、 あるとき思い立ちて、ただひとり徒歩(かち)よりまうでけり。 『徒然草』 第五十二段 日本三大随筆のひとつ、徒然草(つれづれぐさ)の一段です。吉田兼好によって鎌倉時代の末期に書かれたこの随筆には仁和寺の法師の話がよく出てきます。大体が「宴会芸で甕に顔を突っ込んで出なくなった」とか「宴会芸で弁当を隠して宝探しごっこをしようと思ったらパクられた」など、アホな話なのですが。 兼好は当時、仁和寺に隣接する双ヶ丘(ならびがおか)に住んでおり、そこから仁和寺の法師らの乱行をストーキングしたりうわさを聞いたりしていたのでしょう。たちの悪いおっさんですな。 で、そんな仁和寺話の中でも極めつけが第五十二段のこの話です。古典の教科書にも載っているのでご存知の方もおられるでしょう。このお話、仁和寺のある法師の思いつきに始まります。彼は年をとるまで