雲1つない青空だった。 昨年12月29日、埼玉・熊谷。時刻は午後4時を回っていた。帰宅を促すアナウンス。スタンドは閑散としてきた。そこにポツリと立ち尽くす女性。誰もいないピッチを見つめていた。 目からこぼれる滴。そっと差し込む夕日が、ぬれた頬を優しく包み込んだ。顔をクシャクシャにして、言葉を紡いだ。 「ここに連れてきてくれた寮生たちとチームの皆さんに感謝です」 赤いTシャツの下に着込んだ厚手の衣類。全摘出手術を受けた左胸を温かく覆っていた。ニット帽からはみ出た髪の毛は、ウィッグだった。 ★普通の主婦が立ち上がる 物語は、何年も前にさかのぼる。これは、秋田に住む赤坂郁子さん(40)と、その家族の話。夫二郎さん(40)は柔道整復師であり、介護福祉士でもあり、秋田市内の「てらうち整骨院」を営む院長。2人は、4人の子宝に恵まれた。 大家族のママは家事、育児の傍ら、整骨院をサポートする日々。患者と対