雑草に覆われた道路で、まるで瀕死の病人の心臓のように、 信号機だけが点滅を続けている。 音のない無人の街を、目に見えぬ放射線が異常な数値で 覆っている。原発から20km圏内の警戒区域。 あの日、避難令は人間にだけ出され、動物は避難できなかった。 置き去りにされた動物たちは、その後どうなったのだろうか。 (Text : Miwa ARAI) 彼らは、そのままだった。つながれたまま餓え、渇き、悲鳴をあげながら死んでいった。その叫びのほとんどは人間には届かないままに。原子力という、自らがつくりだしたものから、私たちは逃げた。あらゆるほかの命を放り出して。しかし、2年が経つ今日もそこには、人間の帰りを信じて待っている命がある。 そしてその命を救おうと戻った人間も、いる。 彼らは確かにここにいた ~ 太田康介さんの場合 ~ 「あ、これはいかん」。それは無人の街を、首輪を付けた犬たちがうつろに放浪して