欧州を席巻する債務危機の大波が、地中海に浮かぶ小国キプロスを襲った。国際支援に頼らざるを得ないキプロスだが、「カネ」と引き換えに「緊縮」を迫る欧州連合(EU)への不信感は強く、EU域外の大国ロシアとの関係を深める。不景気に救いの手を差し伸べるようにロシア人観光客数は過去最高を記録する勢い。南部の高級リゾート地リマソルは「リトル・モスクワ」と称されるほどの活況だ。 民族紛争で南北に分断された首都ニコシアから車で南に約1時間。砂浜と青い海に彩られたリマソルの街中にあふれるロシア語の看板に面食らった。地元住民向けの簡素な雑貨店から美容院、レストラン、果てはナイトクラブや不動産屋まで、キプロスの公用語であるギリシャ語とともに、ロシア語が併記されている。 「常夏の太陽と安全な社会、ロシア語が通じる友好的な環境が魅力ですね」。5年前にモスクワから移り住んだナタリアさん(26)は勤め先のロシア語専門