「足立区では同性愛を認めません」 その政令がくだされたのは、なんでもない平日の午後のことだった。 昼休み、うちのクラスの担任である佐藤先生が慌てた様子で教室に駆け入ってきて、突然教室のテレビを点けた。 教室のテレビなんて、そうそう使われることがないから、点いてる様子を皆が興味深そうに眺めていたら、画面に写った知らない政治家のおじさんがそう言ったのだ。 ◆ 何故同性愛を認めないのか?なんてことはない、理由は知らない政治家が語った。 ここ最近、何度もニュースで聞いたような、ありふれた馬鹿らしい理由だ。 「ここ、足立区では同性愛を赦してしまえば、神の裁きが下り、滅びてしまいます」 ◆ 神の裁き?ばかな話だ。 ばかな話だけれど、どうも大人たちはそんなばからしい話を真に受けているようで、足立区からはここ数年で随分と人が消えていった。 3年ほど前、政府の生み出した『ホモヘテロセンサー』というムズかしい