EU憲法条約、大差で否決 仏国民投票/朝日新聞

2005-05-30 10:45:56 | 世界
欧州連合(EU)憲法条約の是非を問うフランスの国民投票が29日終了し、即日開票の結果、反対54.87%、賛成45.13%で、同条約の批准は拒否された。25カ国に拡大したEUの基本法である憲法条約を、旗振り役のフランスが大差で拒否したことで、欧州統合の歩みには強いブレーキがかかり、EUは打開策を迫られる。EUでのフランスの威信は低下し、米国や日中に対抗できる多極世界の一翼を目指した欧州の求心力や存在感にも響きそうだ。

 シラク大統領は大勢が判明した29日午後10時半(日本時間30日午前5時半)、テレビ演説で敗北宣言し、「欧州でわが国の利益を守るのは難しくなった」と、フランスの影響力低下は避けられないとの見方を表明。「数日中に政府に関する私の決定を発表する」と述べ、ラファラン首相の更迭を示唆した。投票率は69.7%だった。

 EU憲法条約はこれまでに9カ国が議会採決や国民投票で批准を承認した。しかし、EU加盟25カ国のうち1カ国でも批准しないと発効しない。今回の結果で、6月1日に国民投票が行われるオランダをはじめ、これから条約の是非を国民に問う国でも反対論が勢いを増すのは確実だ。EUは16日の首脳会議で批准手続きを続けるかどうかを含めた対応策を協議する。

 中軸国が約10ポイントの大差で否決した重みは大きく、条約の見直しも視野に入れた対応を迫られる。EUの機能はニース条約で維持されるが、統合プロセスが当面足踏みする事態は避けられない。今年10月に始まるトルコの加盟交渉にも影響しそうだ。

 フランスでは共産党を除く主要政党、経済界、メディアが「賛成」を掲げ、昨年末までの世論調査では態度を表明した有権者の6割以上が支持していた。だが、今年に入って反対世論が急速に拡大、3月以降はほぼ一貫して反対が優勢だった。

 その背景には、失業率が5年ぶりに10%を超えるなか、欧州の競争力を高める形で統合が進めば、人件費の安い東欧への企業流出や、東欧からの労働者流入が加速し、雇用や労働条件が脅かされるとの不安がある。

 重要政策を一部のエリート官僚が決めているという以前からのEU批判も再燃。多くの国民が国民投票を、もろもろの不満をぶつける機会と受け止めた。このためシラク大統領は、終盤のテレビ演説で国民の不満に理解を示し、国民投票を政府批判の場にしないよう訴えた。

 予想外の大差がつき、「首相交代では十分ではない」(右派・仏民主連合のバイル党首)と、シラク大統領の責任を問う声も左右両派から出ている。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。