旅限無(りょげむ)

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日本の宿題 その六

2008-08-29 15:53:20 | 外交・情勢(アジア)
■本当は危険な国に出掛けたボランティア青年の消息を知ることより、連立相手の公明党との折衝やら民主党に対する分裂工作など、「選挙屋」政治家にはもっと大切なお仕事があるのでしょうに……。国会審議の中心議題となるはずの「対テロ特措法」にしたところで、アフガニスタンの復興が問題なのではなく、対米協力に少しでも現実味を加えるのが目的のように見えます。既に自民党内からはアフガニスタンなど面倒な外交問題を切り捨てて、石油を安全に輸入するための「シーレーン防衛」問題に話を転換しようという動きがあるようですから、アフガニスタン現地の人々を助ける話はどんどん霞んでいたところでしたから、本心では迷惑な思いをしているのではないか?と思っていたら、この種の問題に特に冷淡な印象の強い官房長官が、やっぱり事務的に対応してみせたのでした。

町村信孝官房長官は27日午前の記者会見で、……「安否は不明だ」と述べた。また、情報収集のため伊藤さんが連れ去られたジャララバードに日本大使館員を同日派遣することを明らかにするとともに、「一刻も早い解放に全力を尽くしている」と強調した。伊藤さんを拉致した犯行グループは、アフガンの反政府武装勢力タリバンとみられるが、町村長官は「確定できない」と述べた。また、町村長官は「(犯行グループの)居場所はアフガン当局がほぼ特定している」と述べたが、詳細な説明は避けた。さらに、日本政府として犯行グループと接触できていないことも明らかにした。 
8月27日 時事通信

■身代金などの条件交渉が行われていないというは最悪で、それこそ「政治的な背景」がある狂信者が起こした凶行でる可能性が高い証拠になります。今のホイホイ総理の父上は、「人命は地球より重い」という名言?を吐いて共産主義テロリストの要求を全面的に飲んで、刑務所から懲役囚を解き放つわ莫大な身代金は支払うわ、世界中からアホかいな?と陰口をたくさん頂いたことがありましたなあ。そんな恐ろしくも恥ずかしい過去をあちこちのテロリストが思い出して、福田内閣が存在している間に「地球より重い」人質を獲って大金をせしめようなどと思わないことを祈るばかりです。

■伊藤さんの拉致事件に関して「強い憤りを感じる」と言った福田ホイホイ首相でしたが、考えてみれば殺人イチコロ餃子を作って出荷居した事件が起こった時には、この種の発言が無かったのは何故でしょう?


……外務省の山本一太副大臣は27日、記者会見し、現地で伊藤さんの捜索に当たっていた捜査当局が同日、現場周辺で日本人らしい男性の遺体を発見したことを明らかにした。現地の警察署から日本時間の同日午後2時ごろ日本側に連絡があったという。遺体には足と腹部に銃で撃たれたような跡があるという。外務省では伊藤さんの可能性もあるとみて、大使館員を派遣し、身元確認を急ぐ。

■「大使館員の派遣」がなかなか実行されないのも不思議ですが、現地の捜査当局が言う「日本人らしい男性」という表現も不思議です。まるでミッドウェイ海戦の時に打電された「敵らしきもの見ゆ」みたいな受け取った側が困惑するだけの連絡であります。人口密集地でもないのに、外国人か現地の人間なのかも見分けられない状態なのか?と非常に心配にもなります。


外務省などによると、伊藤さんは現地時間26日午前7時(日本時間同11時半)ごろ、ジャララバード近郊のダラエ・ヌールで自動小銃を持った4人組にアフガニスタン人の運転手とともに拉致されたという。地元警察が捜索中に武装勢力と銃撃戦になったという情報もある。アフガニスタン政府側は一時、「伊藤さん解放」と日本側に連絡したが、後に「誤報」だったと訂正。政府は首相官邸に情報連絡室を設置して情報収集を進めている。伊藤さんは平成15年12月から、現地で農業支援などの活動をしていたという。
8月27日 産経新聞

■現地で足掛け5年間も踏ん張っていた伊藤さんには、多くのアフガニスタン人たちが信頼を寄せ、感謝もしているそうですが、その気持ちがまったく通じない者がうろうろしているのが現状なのは悲しい話です。えてして短絡的なテロに走る若者の多くは、教育も受けられない貧困状態に育ち、それに付け込んでテロの道具に利用しようとする悪い奴らが熱心に「教育」を施して立派な?テロリストに育て上げてしまいます。貧困と教育の問題は、これからますますグローバル化した世界の大問題になって行くのは分かっているのに、「外国の福田」政権からは内政・外交の両面で、この点に関する素敵な発言は出て来ませんなあ。今でも世界中で教育を支援する活動をしている多くの日本人がいるというのに……。

日本の宿題 その伍

2008-08-29 15:10:51 | 外交・情勢(アジア)
■以前に比べてアフガニスタンも随分と近くなったものだと、この2日間の報道を見ながら感じております。皆様のNHKが日中共同取材の大看板を立てて制作した『シルクロード特集』でカイバル峠の巨大な九十九折(つづらおり)やバンディ・アミール湖の神秘的な青色に驚かされたものですが、戦乱さえなければ多くの観光客が押し寄せるであろに、と他国のことながら残念に思います。1970年代頃は世界で一番麻薬が安く簡単に手に入る国として有名になったこともあり、怪しげなバックパッカーが集まったものですが、ソ連の侵攻から紆余曲折があって、とうとう世界最大の麻薬生産輸出量を誇る?国になってしまったようです。

■宗教思想の対立が取り沙汰されてる裏側では、相当に胡散臭い組織が非合法な密輸活動をしているのは間違いありません。水利工事や農業開発、そして何よりも教育施設が緊急に必要とされている場所が、麻薬と武器の密輸で賑わっているのですから、これは悲劇以外の何物でもありません。


……外務省は27日、カブールの日本大使館職員を現場近くに派遣するなど、情報収集体制を強化する。今後、事態の変化に応じて緊急対策本部(本部長・山本一太外務副大臣)を随時開催して対応する。外務省幹部は27日朝、記者団に対し「いろいろな情報があって(状況は)よく分からない。身代金の要求は聞いていない。政治的な背景は無いだろう」と語った。
8月27日 読売新聞

■情報が錯綜して詳しい状況が分からないのに、どうして「政治的な背景は無い」などと断定的に言えるのでしょう?次の国会で給油活動に関する法案を通さねばならないからという理由で情報を捻じ曲げては行けませんなあ。希望的観測を混ぜ込んで、日本側の「政治的背景」に合わせた解釈は厳禁です!


……日本政府は外務省と首都カブールの日本大使館に対策本部を設置して情報収集にあたった。……山本一太外務副大臣が26日夜の記者会見で説明したところによると、現地日本大使館に「伊藤さんが解放された」との連絡があったのは、現地時間午後3時45分(日本時間午後8時15分)で、「アフガニスタン政府の責任ある当局者」から伝えられた、という。この時点で外務省幹部は記者団に「まだ現地日本大使館員が伊藤さんの顔を見たわけではない」としながらも、解放への期待感が広がりつつあった。

■そもそも、今のアフガニスタンに「責任ある当局者」などと呼べる人が居るのなら、NATO軍もブッシュ政権も苦労はしません!残念ながらカルザイ大統領はゴッツイ米軍にがっちり固められたカブール市内に籠もり切りで、欧米諸国から流れ込む援助資金を栄養分にしてすっかり腐敗した役人を従えて形ばかりの政府を店開きしているだけのようですから、それ以外の場所が無政府状態になっているのは想像に難くありません。日常生活の治安を維持するはずの警察組織が頼りにならなければ、誰もが自己防衛のために武器を携行する必要があるわけで、そんな場所に丸腰で乗り込んみ支援活動を続ける勇気と実行力には頭が下がる思いになる人が多いからでしょう。不毛な「自己責任」論争は起こらず、心許無い不確かな情報でも、「無事」と聞いて我が事のように安心した人も多かったはず。日本の国民レベルが少しばかり向上したのかも知れません。でも、外務省は相変わらず……。


この約1時間前、「犯人が伊藤さんを拉致して農家に立てこもっているが、警官と住民約1000人が包囲しているようだ」(政府高官)との情報も入っていたためとみられる。だが、「解放情報」から1時間後、アフガン当局側から「先ほどの連絡は誤報だった。現在も捜査中だ」と訂正の連絡があり、一転して重苦しい雰囲気に。「アフガン当局は伊藤さんの安否を確認していない」(山本副大臣)ことが判明した。

■信頼出来る警察組織が存在しているのなら、パキスタンとの国境が融解して穴だらけになどなりませんし、イラクで失業?したアルカーイダ一派が退去して国内に流入することなど不可能だったはずです。各家庭に1丁以上の機関銃が行き渡っているような場所で、拉致犯人を包囲などしたら暴発を含めて一発の銃声が切っ掛けとなって一斉射撃の撃ち合いが始まり、流れ弾や兆弾で味方の同士打ちも起こるでしょうし、立て籠もった側も自暴自棄になって……。


山本副大臣が解放情報を訂正するための記者会見を行ったのは、日本時間で26日午後9時40分過ぎ。誤報の原因について山本副大臣は「アフガン政府はできるだけこの問題に対応したいという気持ちで、こういうことになったのではないか」と説明したが、表情には疲労の色が浮かんでいた。
8月27日 産経ニュース

■マスコミ(民放テレビ)に頻繁に顔を出している山本副大臣ですから、緊急記者会見の場でも緊張はしないのでしょうが、民放テレビの放言・暴言・お笑い茶化し番組の垢が付いてしまうと、発言に重みと信頼性が無くなってしまうような気がしますなあ。要するに軽率な印象が強くなって信頼性が失われます。アフガニスタンに飛んだはずの松浪チョンマゲ議員はどうなったのでしょう?