辻田真佐憲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すごく良いです。
日本は時代の空気やなんとなくの雰囲気に流されやすく「物語」の影響が大。無責任の構造というか、独裁的な牽引力の核がないというか。強みでもあり弱みでもあり、政治も経済も民衆も無自覚にダメ物語スパイラルにハマりやすい。的な感覚があればオススメです。
戦前に詳しくなければ多くの発見が、大学受験で日本史選択程度の知識でも(私)、全然に発見が多数です。
我々が生きる我々の社会を、多くの人にとって少しでもより良いものにするために、健全に盛り上げていこーよと。そのために必要な、空気に流されないスキルの獲得に有用です。我々の物語を適切に上書きして、社会をアップデートしていきたいですね。 -
Posted by ブクログ
そもそも、戦前はいつから始まったのか、何故日本は太平洋戦争中、あのような軍国主義国家になったのか、非常に興味があった。
その答えがこの一冊にあった。
なかなか衝撃的な内容である。
有名な童謡の作曲家が国威高揚を目的とした歌をつくっていたり、我々が健在学んでいない事実かたくさんこの本には書かれている。
日の丸、君が代、靖国神社等の問題は、この本の知識なしではよくわからない。
明治維新も、我々が習ったことは随分過不足がある。
なぞだらけである。実は、江戸時代の日本は平和でみな幸福に暮らしていたのではないか。
明治維新から太平洋戦争終戦まで、何か重要なことが隠されているのではないか、という気 -
Posted by ブクログ
わたしの個人的な思想はリベラル寄りで、いわゆる「歴史修正主義」的な動きなど、右派論壇に対してはつねに批判的な視線を向けてきた。関聯する記事などもよく読むのだが、そこでしばしば用いられるのが「戦前」という言葉である。「戦前回帰」といった形で眼にすることも多いが、しかしその実、われわれは「戦前」という言葉をイメージでしか捉えておらず、正しく理解できているとは言いがたい。そこで今回は、正しい「戦前」像を理解するために、「新書大賞2024」で第7位になった本作を読んでみた。内容的には、「創られた『伝統』」という、よく知られた言いまわしがあるが、たとえば「八紘一宇」というキイワードがいかに「創られた」か
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匿名
購入済み明治維新から太平洋戦争での敗戦までの「戦前」と呼ばれる時代に、日本神話がどのように利用されたのかをたどる一冊。ネーションビルディングのための方便として参照された日本神話が時代を下るにつれて、神聖不可侵なものへと変わっていき国家の破滅という大惨事に突き進んでいく、まさに自家中毒を起こしていたというそういう側面を説明しています。昨今の日本の日本会議とかの右翼団体を思い出す人もいるかと思いますが、それよりも今のロシアや中国、イスラエルあたりの国を思い浮かべてしまった。国民の物語は国民国家形成のためにはやはり必要でしょうが、それが有害なものに変わりルサンチマンと選民意識に彩られたものになり、対外拡張の
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Posted by ブクログ
日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった日本の歴史と神話の関係性を網羅できる。特に、神武景気や岩戸景気、いざなぎ景気といった言葉に表れるように、戦後の日本でも神話の教養が人口に膾炙していたことが印象的である。それが、日本という国が世界に晒された時の弱小コンプレックスなのか、日本という国の雰囲気をよく表していることなのか、考えてみたい。
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Posted by ブクログ
明治維新から77年で敗戦。敗戦から77年が昨年2022年。我々はいまだ明治政府に縛られている。いやそれどころか、亡霊のようにつきまとい、肥大化してさえいる。
欧米列強と闘うためには西洋化が必須。
江戸幕府にとってかわった薩長明治政府は天皇を担ぐ。
しかし天皇は和服、では西洋化のシンボルにならない。
古事記日本書紀に遡れば神武天皇は闘う天皇。
神武天皇以来万世一系の天皇こそ闘う天皇。
天皇陛下の下で富国強兵だ!
みたいな絵を書いて、そのために、それまでは存在を忘れられていた神武天皇を担ぎ出し、
その肖像画は明治天皇に似せて作り、、
その明治天皇の肖像も元は東洋顔だったのが、それでは弱いと西洋風 -
Posted by ブクログ
題名に強く惹かれ、入手して紐解き始めると、なかなかに愉しかった。出逢えて善かったと思える一冊だ。
研究成果や論考を、幅広い読者に向けて判り易く説くという、「新書」らしい感じの一冊だ。題名から受ける、少し厳めしい感じでもない。6つの章が在るが、各章での話題は何れも面白い。
第2次大戦の前後で「戦前」、「戦後」という言い方を広くしていると思う。両者は、何となく「別」であるかのように感じさせられているかもしれないようにも思う。「戦前」の範疇に産れた人達の人生が「戦後」にも続いている例は多く、「戦前」に定着したようなモノが「戦後」に在り続けている例も多いであろう。更に「戦後」の中だけでも、様々な変遷が -
Posted by ブクログ
誰でも知っている防衛省・自衛隊。しかし、山本五十六、東郷平八郎、東条英機のように防衛省・自衛隊で思い浮かぶ顔はあるのか、防衛庁の歴史を知っているかと言えば、首を傾げる人が多い。そんな動機が筆者にこの良本を書かせた。
本書が何より素晴らしいのは、列伝形式の物語風で兎に角読みやすい。それでいて、旧軍からの連節、駐留軍との関係、内務官僚による立ち上げと制服と背広の相剋などの草創期の視点、防衛大綱など戦略の背景などがよく理解できる。また、ある程度知識や記憶のある近年の話よりも過去に多くを割いていただいていることが、防衛省・自衛隊の成り立ちを理解する上で非常に良かった。
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Posted by ブクログ
【現代日本では、自衛隊への信頼度はすっかり高くなった。しかしだからといって、「軍隊による安全」一辺倒でいいわけではない。「軍隊からの安全」もまた、古今東西の歴史を踏まえた、人類の英知のひとつである。この両者のあいだのバランスを取りながら、今後の安全保障を考えていく。それがいま求められている】(文中より引用)
戦後間もない頃から現在に至るまでの幹部役人に光を当てながら、日本の防衛政策を人で読み解くことを試みた一冊。著者は、『文部省の研究』などでも知られる辻田真佐憲。
人に焦点を当てた構成になっているため、防衛・軍事の素人にとっても読みやすく、かつわかりやすい内容になっているところが特徴的。そ