日本では、国内に風力市場が育たないまま、三菱重工業、日立製作所、日本製鋼所などの主要メーカーが大型風力発電機の開発・生産から軒並み撤退した。一方、デンマークのヴェスタスや独シーメンスはリスクを取った投資で着実に成長した。なぜ、日本勢は劣後することになったのか。「欧州に比べスタートラインで20年以上後れをとった」と話す、三菱重工出身で日本風力発電協会代表理事の加藤仁氏に聞いた。
出身の三菱重工業は、日本の風力産業の象徴的な存在だった。
加藤仁氏(以下、加藤氏):今振り返れば、三菱重工業が風車で世界一になることもできたと思う。三菱重工は1980年代に風車事業を開始し、大型化を進めた。再生可能エネルギーの優遇政策を推し進めた米国で事業を拡大したが、2008年のリーマン・ショックで風向きが変わった。
順調に伸びていた注文が相次いでキャンセルになった。他社製もそうだったが技術的に発展途上であり、設置した風車の軸受けの故障などトラブルも続いた。赤字に陥っていたこともあり、米国事業からの撤退を決めた。その後、大型化が難しい陸上風力事業そのものからも撤退を余儀なくされた。
転機は14年。洋上風力の可能性に賭け、三菱重工はリーマン・ショックの影響で経営難にあったデンマークの風車大手ヴェスタスとの合弁会社、MHIヴェスタス・オフショア・ウィンド(以下、MHIヴェスタス)を設立し、私はCo-CEO(共同最高経営責任者)として、デンマークで任にあたった。互いの技術を持ち寄り、成長が見込める洋上風力で風車の設計・開発から生産・販売までを共に手掛けるスキームで、期待していたが、結果的には思うような成果が出せなかった。
風車開発から事実上撤退
なぜうまくいかなかったのか。
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