結局カレー

Cloud クラウドの結局カレーのレビュー・感想・評価

Cloud クラウド(2024年製作の映画)
3.0
「転売ヤーしてたら恨みかいすぎて死にかけた件」って題したらさすがに怒られそう。でもまぁ間違ってはなくて、むしろその一本でここまで観客の心をざわつかせるのはこの映画の妙。

転売ヤーとして金を稼ぐ吉井。生命やアイデンティティを傷つける犯罪に比べればたかが転売、、、という勿れ。作り手が提供する価値を壊して対価を横取りし、消費者の購入する機会を奪っては時に欲求に漬け込んで金を釣り上げ騙したりするのが転売であり、立派な犯罪。その憎しみはひとつひとつの火種は大きくなくとも燻り続け、それらが繋がったとき途端に大きな火事になるって様を見せつけられゾクゾク。

でもこの映画の主人公は吉井という転売ヤーではなく転売ヤーである吉井。周囲に一歩線を引き心の奥底で他人を侮る人間性が仇となり、まともに相手にしてなかった人たちから憎悪の念を向けられる。何故だかそう遠い話に思えなくて思わずゾッとする。誠意を持たざる者の成れの果て、生き延びるために罪の上塗りをせざるを得ないというまさに地獄の始まりを見た気分。佐野くんの正体も不明のまま、なんだか霧がかったような映画だったわ。不誠実に生きてるといつのまにか銃口が向けられてる、なんてことがあるのかもしれないね。怖。