案山子

ブローニュの森の貴婦人たちの案山子のレビュー・感想・評価

3.5
フェードでシーンが変わる直前のカット尻でなんの前触れもなく、突然マリア・カザレスの頬を伝っていく涙に戦慄する。それは無表情のままエモーションを表象するという二律背反の結果なのだが、この「涙」を当然のごとく1カットで収めてしまう無機質さがいかにもブレッソンらしい。

『罪の天使たち』ではヒエラルキー=頭巾の色として描かれてきた、世界を白黒の二色に還元してしまうシネマトグラフ。それゆえ終盤の結婚式で新郎の「黒」と新婦の「白」が邂逅するシーンは、画面に映るコントラスト以上に強烈な印象を残す。
ただ肝心の物語はあまりに現代とかけ離れた階級意識で貫かれているので面白くはない。
案山子

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