2008-01-01から1年間の記事一覧
“Fiasko” 1987 Stanisław Lem 0. スタニスワフ・レムの最後の長編。 レムが何度か取り上げてきた「人類と地球外知性のファースト・コンタクト」という題材が、ここでも挑戦されている。“砂漠の惑星”や“ソラリス”のように、人類の常識では計り知れない異質な生…
“Never Let Me Go” 2005 Kazuo Ishiguro 31歳になる女性の独白により綴られる小説。 彼女は11年以上、介護人としてのキャリアを持っている。 子供の頃の思い出から始まり、まわりの人々との交流を詳細に描きながら、現在の彼女へとたどり着く物語。 この小説…
“Die Gegenstandslose Welt” 1927 Kashimir Malewitch シュプレマティズムを提唱したマレーヴィチがバウハウスから出版した論文。抽象芸術の極北とも言える“黒の正方形”がどのような考えのもとに描かれたのかが説明されている。 マレーヴィチは、写実的な絵…
“Głos Pana”, 1968“Katar”, 1976 Stanisław Lem スタニスワフ・レムの中期の著作。 少し傾向の異なる二作品が収められている。 以下、ある程度ネタバレ含みます。 (“天の声”は、仮にネタバレがあっても読むおもしろさに支障はないと思うけど、“枯草熱”はまが…
“TAP and other stories” 2008 Greg Egan 1986年から1995年までに発表された10本の作品を集めた短編集。ハードなSF設定は皆無で、舞台は現代か、ごくわずかな未来。SF的ガジェットがまったく出てこない作品もある。各話の雰囲気はグロテスクもしくはコミカル…
Keith Kenniff (aka Helios)の別名義による。3rd*1。ピアノ主体で、Helios よりも冷たい世界。その分、繊細で研ぎ澄まされている。色気は全然なくて、夜の静謐の中で秘やかにきらめいているような音色。 曲タイトルは、全体でミニマルな詩のようになってい…
“Hothouse” 1962 Brian W. Aldiss 植物SF。 惑星の軌道状態が変わっているほどの遠い未来、太陽の寿命も尽きようという遙かな時代の地球が舞台。当然ながら地球の生態系は激変していて、完全に新たな生物群に取って代わられている。人類もかろうじて残存して…
スイス人ピアニスト Nik Bärtsch によるユニットの4thアルバム*1。6分から15分弱までの6曲から成っている。ロック...とまではいかないけど、わりとダイナミックで活力のある曲が多い。 M-2 “Modul 41_17” 長く長くためた上で、5'20"あたりから強弱の効いた展…
5th。アコギ弾き語り。枯れた世界に響く儚げな歌声。でも芯の強さを感じる。秋に合う音楽。 M-2 “A Partridge Song” M-3 “The Louder” サビの“louder, oh louder〜”のところが、たまらない。 M-5 “A Room For These” M-6 “Blue Light Room” M-7 “Need No Pon…
講談社新書版。“好き好き大好き超愛してる。”に加えて、短編の“ドリルホール・イン・マイ・ブレイン”が収録されている。 “好き好き大好き超愛してる。” 0. 構成はけっこう難しいつくりになっているけど、はっきりと恋愛小説。1. 各章ごとに違った主人公が出…
音楽が好きです。 ...このことは、いつだって完全な確信をもって言えると思っていた。 だけど自分の人生を振り返ってみると、音楽をほとんど聴かなくなっている時期もないわけではない。CDを買わなくなるという明確な変化はもちろんのこと、以前は家にいると…
“Ökologische Kommunikation” 1986 Niklas Luhmann
0. おもしろかった。 ちゃんと読み進めてみると読む前に持ってた先入観や最初ぱらぱらって見たときの印象とだいぶ違って、良い方に予想外の小説だったと思う。 どういう小説か一言で説明するならば、「女子高生によるいまどきっぽい語り口のスピード感あふれ…
“4 LUNI, 3 SAPTAMÂNI SI 2 ZILE” Cristian Mungiu, 2007 非常にインパクトの強い映画だった。 [あらすじ]1987年、チャウシェスク独裁政権下のルーマニアでは中絶が違法とされていた。大学生オティリアは、ルームメイトのガビッツァの中絶を手伝う。手術(と…
“Supernova / Wanderland”を気に入ったので1stフルアルバムも買ってみた。10月に2ndアルバム発売予定みたい。けっこう演奏がハイクオリティだとあらためて思った。リズム良いし展開もおもしろい。 歌詞については... “Supernova / Wanderland”を一聴した段階…
数学的恋愛小説。もしくは恋愛的数学小説。全4編から成る。 小説の形式としては、テクストがテクストを生成するという考え方を中核に据えていて、バルトだとかクリステヴァだとかの間テクスト論を思い起こさせるようなポストモダンの香りが漂っている。特に…
“MARIA FULL OF GRACE” Joshua Marston, 2004 [あらすじ] コロンビアに住む17歳の女の子マリアは、職を失い、望まぬ相手との子供を身ごもりながら、半ば自暴自棄になって麻薬の運び手となる道を選択する。行き先はニューヨーク。カプセル状に詰められた無数…
“Y tu mamá también” Alfonso Cuarón, 2001 いつか見たいと思ってたのをたまたま今日見たのだけど、ちょうど夏というこの時期にぴったりの映画だった。 メキシコが舞台のロードムービーで、男2人女1人で海を目指す話。暑いなかクーラーをつけずに見たらやた…
“IL DESERTO ROSSO” Michelangelo Antonioni, 1964 0. [概要] イタリアの工業都市ラヴェンナに住む主人公ジュリアーナは、交通事故の後遺症のため、安定しない心理状態に悩まされている。夫は優しくはあるが、ジュリアーナの心の癒しにはならない。彼女は夫…
“Kauas pilvet karkaavat” Aki Kaurismäki, 1996 “街のあかり”ですっかり好きになったカウリスマキ。そもそも最初はこの“浮き雲”を見たかったのにDVDがずっと見つからなかったんだけど、幸運にも偶然遭遇して、ようやく見れた。 不況で失業してしまった夫婦…
初めてちゃんと聴いた。期待される若手バンドとしてよく言及されているのを目にしてたのでずっと気になってたにもかかわらず、試聴したときの衝撃がいまひとつ足りなくて買わずにいたんだけど、久しぶりに見かけて聴いてみたらけっこう良かったので買ってみ…
7th。 M-1 “BIXBY CANYON BRIDGE” M-2 “I WILL POSSESS YOUR HEART” 最初インストが延々と続くのでこのままヴォーカル無しなのかと思った。イントロからひたすら荒涼と陰りのなかを突き進む。このアルバムの中でもっとも異質な気配を放っている。ヴォーカル…
“Laitakaupungin valot” Aki Kaurismäki, 2006 “リンダ”と“天然コケッコー”を気に入った山下敦弘が“日本のカウリスマキ”と呼ばれてるという話なので見てみた。見てる途中までは「うわー、これ、きついなー...」という感じだったけど(メンタルな負荷という意…
〈公共性〉という概念については、どこかでちゃんと学んでおかなければ...と思っていていい本が見つからないでいたのだけど、この「公共性」論を見かけたので、読んでみた。 「公共性」論作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2008/03/01メディ…
4曲入りミニアルバム。最短5分から10分近くまである長い曲ばかりなので、全体でフルアルバムに近いボリュームかも。4thよりもストイックな趣があるけど、軽快さや疾走感もあって聴きやすい。丹念に情景を拡げていくつくりというより、もっと身体的に訴求して…
“LIAR”と共にこのアルバムも。 M-2 “Mouth Breather” M-3 “Nub” M-5 “Monkey Trick” M-7 “South Mouth” M-9 “Rodeo In Joliet” ジャケットもかっこいい。裸体に投影された映像。ローマン体の大文字で組まれた力強いタイトル表記も、スタンスと音を良く表して…
旧譜。92年。この種の荒く乾いた音を、飢えるほどに欲していたので買ってみた。最近ずっとこれ(ともう1枚)ばかり聴いてた。全パートに個性と技量が備わり、それらが一体となって重くうねる。ノイズ·ハードコアにこそむしろテクニックが不可欠だと理解した…