中国大手はスマート製造に強み、世界市場でさらにプレゼンス拡大へ
世界経済の不確実性が高まる中にあって、BOCIは中国の家電大手がその他消費財銘柄をアウトパフォームするとみている。国内の政策支援の下、強力かつスマート化した製造プロセスに支えられたイノベーションの継続が、中国の家電大手の強み。世界の家電市場が低迷しても、中国の大手ブランドは市場シェアの拡大や利益率の改善により、輝きを維持する可能性が高いとした。海外展開の強化はまた、国内市場への過度の依存リスクを軽減させる点でもメリットがあるとの見方。ROE(自己資本利益率)と株価バリュエーション面の魅力を指摘し、個別では世界最大の白物家電メーカー、海爾智家(06690)に対する強気見通しを継続した。新たにカバレッジを開始した美的集団(00300)に対しても強気見通しを付与している。
コロナ禍というイレギュラーな時期を除けば、世界の家電市場は2017-23年に年率平均4%の成長を遂げた。BOCIはこの傾向は今後も続くとの見方。4%との成長率は低いようにも思えるが、中国企業は欧米など既存市場でシェアを拡大しつつ、インドや東南アジアなど、高成長が見込める新興国市場に参入することで、市場全体を上回る成長率が期待できるとしている。
金融引き締めによる世界の不動産市況の後退が家電需要に影響するとの懸念もあるが、中国においても今や、買い替え需要が家電販売の原動力であり、主要国・地域では需要全体の50-75%を占める可能性がある。BOCIはエネルギーコストが高騰した場合、省エネ家電のニーズが高まり、買い替え需要をさらに後押しする可能性を指摘している。
BOCIは中国家電ブランドにとっての長期のテーマとして、一段の自動化や部品の外部製造委託の低減といった「スマート」製造の最適化を挙げている。これが粗利益率の改善、さらには潜在的な営業利益率の改善に道を開くとの見方。中国企業はスケールメリットの点から、相対的に利益率の改善余地が大きいとみている。
このほかノウハウの収益化もさらなる成長を促す見込み。家電の製造プロセスや部品は業務用冷蔵庫、ビル管理、ロボット関連ソリューションなど、異分野に応用できる可能性があり、中国の有力企業はすでに、こうした分野での企業買収に動き出している。そうなればシナジー効果による競争力の強化と利益率やROEの向上が期待できるという。
中国政府が主導している家電買い替え補助金制度は狙い通り、2024-25年の買い替え需要を喚起しているが、市場が懸念しているのは需要の先食いによる制度終了後の需要の低迷。2026年以降の業績に脅威となる可能性がある。BOCIはこの点で、産業オートメーションなど、ビジネスの多角化で先行している美的集団を高く評価。海爾智家H株より、美的集団H株をトップピック銘柄に据えた。カバー銘柄の残る1社、小型家電大手のJS環球生活(01691)の株価の先行きに対しても強気見通しを付与している。