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「ボキャブラ天国」「電波少年」で活躍した50歳芸人の今。“統合失調症”でテレビから消えて20余年「人の人生は終わったところで始まる」

中学2年生の頃から、「加賀谷、臭いよ」といった幻聴が聞こえ、自己臭恐怖症に悩まされるようになったのが始まりだった。そう振り返る、ハウス加賀谷氏(50歳)に話を聞いた。 ハウス加賀谷氏は、東京都出身のお笑い芸人で、大川興業に所属し、同期だった相方の松本キック氏とともに、1991年に「松本ハウス」を結成した。『タモリのボキャブラ天国』『電波少年』などのテレビ番組で活躍。1999年に、病気療養を理由に活動を休止した。2000年に入院した精神科病院で、統合失調症の診断を受ける。現在は、サンミュージックに所属し、統合失調症に関するイベントや映画会を開催している。 2017年の厚生労働省の統計によると、統合失調症は、日本国内で比較的一般的な精神疾患で、人口の約1%が罹患するとされている。日本国内には統合失調症の患者が100万人程度いると考えられる。これは、喘息の患者と同じぐらいの人数になると考えると、その身近さがわかるだろう。
ハウス加賀谷

ハウス加賀谷氏

お笑い芸人に憧れていた中学校時代

加賀谷氏は、中学生の頃から、ラジオやテレビで、お笑い番組を親に隠れて観ているような子だったという。テレビを観るのは禁止だったので、隠れてビートたけしやダウンタウンを観ていた。中学2年生の頃から幻聴が現れ始めたというが、病識はなかったのか。 「自分の背後からリアルな声が聞こえてきたんです。当時は、親も自分も、精神疾患だなんて思いもしませんでした」 加賀谷氏に高校に進学したい気持ちはなかった。 「中学校の三者面談では、『ホームレスになるので、中卒でいいです』と答えました。親に迷惑もかけないで済むし、地方都市でホームレスになろうと決めていました」という。だが、白紙で答案を出すと、補欠で5番目になり、繰り上がって高校に入学する。 高校時代には幻聴が悪化し、背後から声が聞こえるため、壁に背中をつけて歩かないと安心できない状態となる。

当時まだ知られていなかったグループホームに16歳で入居

35年前、当時まだ珍しかったグループホームに入居することになる。平屋の一軒家で10人程度が生活できた。当時の加賀谷氏がかかっていたのは、思春期精神科だった。医師の処方薬は飲んでいたが、中学生の頃と比較し、症状は悪化していた。床が波打ってみえるなどの症状が出ていた。 「グループホームに最初は偏見を持っていました。だけど、16歳の若い患者は他にいなくて、入居者の方たちが可愛がってくれました。人の痛みを分かってくれる人たちと出会えたことで、幻聴も聞こえなくなりました」
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両親ではなく「自分がやりたいことをやりたくて」
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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「ハウス加賀谷と共に学ぼう、心の病い」や映画の会は、今後は、早稲田にある交流Barあかねで引き続き継続していきます。
交流Barあかねでの映画の会は1/25、「ハウス加賀谷と共に学ぼう、心の病い」は2/15開催予定。
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