維持不可能な医療福祉制度と犠牲になる子供たち

現在の就業者数は6800万人ほどとなっている。
高齢者の労働参加率の上昇を背景に就業者数・労働力人口(就業者+働く意思のある者)は2030年くらいまでは横ばい推移するとの楽観的な見通しもある。(参考

しかし、労働参加率が現状のまま維持されれば、生産年齢人口の減少率を概ね反映する形で就業者数は減少することになると考えられる。そうなれば、2030年には5%ほど、2040年には15%ほどの就業者数の減少が予想される。
就業者数は2030年に6500万人、2040年には5800万人ほどになることを意味する。

一方で75歳以上人口は2030年までに急激な上昇が予想され、後期高齢者の増加から、医療介護需要の大幅な拡大が予想される。

「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)をもとに作成

高齢化の進展に伴い、2040年には必要になる医療福祉就業者数は1100万人弱まで増える見込みである。(参考

そうなれば、就業者全体の20%弱が医療福祉就業者となることを意味しており(足元の医療福祉就業者すうの割合は14%弱)、日本経済の成長力は著しく低下することになる。
また、高齢者への医療福祉サービスの水準を維持すれば、費用面でも現役世代の負担は現実的に耐えられるものではなくなることは明らかであり、少子化は加速することが考えられる。
国債の発行を財源とすれば、通貨安の進展と悪性インフレが進む形で費用の負担を強いられることになる。(日本のエネルギー輸入依存度は9割、食料のそれは6割)

人材の観点からも、財政・経済の観点からも現在の医療福祉・社会保障を維持するのは不可能である。
高齢者の希望ばかりを聞き、改革を怠れば、社会経済が破綻することになる。
高齢者の気持ちに寄り添うために現役世代の労働力・経済力を搾取した結果として社会が崩れるのは、シルバー民主主義国家の末路としては相応しいものではあるが、その被害者は有無を言わさず産み落とされる子供たちであるから残酷なものである。

現在、現役世代を蔑ろにしてでも、高齢者への社会保障サービスの維持すべきであり、それこそが人道的・倫理的なものであるとかのように主張する人も少なくない。
それは最低限のセーフティーネットを維持するために必要な社保改革を拒み、持続不可能な制度の破綻と最低限の福祉さえない世の中を子供たちに押し付けることを意味するだろう。
目の前の高齢者のための贅沢な福祉のために、現役世代とその子供たちを貧しく、最低限の保障もない状況に陥れようというのだから、分かっているなら下劣であり、分かっていないのなら間抜けにもほどがある。

どうせ現行制度の行き着く終わりが決まっているのなら、立て直しのためにもできる限り早くそれを迎えることを祈るばかりである。