音楽原作キャラクタープロジェクト〈電音部〉入門編ープロデューサーが語る「新しいコンテンツとの遭遇体験」とは?
バンダイナムコエンターテインメントが仕掛ける本格的なダンスミュージックを中心とした、音楽原作の新しいキャラクタープロジェクト〈電音部〉。コンポーザーとしてクラブを賑わすアーティストが起用されていたり、アイドルやVtuberが声優を担当したりと大注目のこのプロジェクト。今回オトトイでは、その世界観を大解剖するべく、電音部プロデューサーである子川拓哉氏と石田裕亮氏にインタヴューを実施。〈電音部〉が目指す「新しいコンテンツとの遭遇体験」について伺いました。電音部中毒の方も、初心者の方も必読です!
〈電音部〉シブヤエリア、待望のロスレス配信スタート!!
〈電音部〉とは?
バンダイナムコエンターテインメント内に新しく誕生したレーベル〈ASOBINOTES〉から生み出された、音楽を主体としたキャラクター・プロジェクト。歌やDJ、作曲など、ダンスミュージックをメインにした活動を行う『電音部』に所属する女子高生の姿を追う物語。キャラクターは、それぞれが「エリア」と呼ばれる区域に存在する高校に在籍しており電音部としての活動を行う。それぞれの楽曲にはtofubeats、Yunomiなど“イマ”のクラブシーンを賑わす作家を起用。キャクター・ボイスには、声優、アイドル、Vtuberなどさまざまな分野で活躍中の人物が担当し、話題を呼ぶ。音楽とテクノロジーを中心とした「新しいコンテンツとの遭遇体験」を提案し、クリエーターやユーザーと共に創り上げていくプロジェクトを目指している。
〈電音部〉ストーリー
電子音楽が世界のミュージックカルチャーの中心となった近未来。とある技術革新は、新たな世界の創造と共にスーパースターを生み出した。それこそが「DJ」─。
万人にとって身近なカルチャーとなった一方で、抜きんでたトッププレイヤーたちは人々の憧憬の対象となり、そして彼らのプレイ技術の研鑽は「STACK BATTLE」と呼ばれる競技型のショービジ>ネスへと昇華された。その文化は高校生にも浸透し、「電音部」と呼ばれる部活動の隆盛となって現れる。若者たちの粗削りながら刹那の光を放つプレイもまた、人々を魅了するショーとして世界を熱狂させていく。
「自分の信じる音楽、そして仲間達こそがNo.1である。」己の矜持を証明するため、青春の全てをかける少女達の物語。
■アキバエリア──外神田文芸高校
電子音楽の黎明期に活躍した文芸高校。パフォーマンスをメインとする現代の電音部を志望する者はほとんどいない。
■ハラジュクエリア──神宮前参道學園
帝音国際学院の分校として新設された學園。サブカルチャーに特化した電音部への注目度は高い。
■アザブエリア──港白金女学院
国内最大の財閥「白金財閥」が設立した女学院。トッププレイヤーの輩出に力を入れ、電音部に巨額の資金を投下している。
■シブヤエリア──帝音国際学院
設立から十数年の年月が経つ、シブヤエリアにある音楽に特化した名門国際学院。国内実績No.1を誇り、世界中から最新の音楽を学びに生徒が集まる超強豪校。
INTERVIEW : 〈電音部〉プロデューサー・子川 拓哉 & 石田 裕亮
クラブ・カルチャーの素晴らしいところのひとつは、音楽や場所を軸として様々な人間や文化が混ざりあうところにある。〈電音部〉というプロジェクトは、そういったクラブ・カルチャーの文化のおもしろさをキャラクターを通して、伝えようとすることをコンセプトとしている。今回、プロデューサーである子川氏、石田氏に話を訊いていくうちに〈電音部〉が目指しているところがはっきりわかってきた。これからますます大きなことになっていくであろうこのプロジェクト。まずは入門編としてこのインタヴューをお読みいただければ幸いだ。
インタヴュー&文 : 西田健
リミックスとかもバシバシやってほしい
ーまず、電音部というコンテンツはどのようにしてはじまったんでしょう?
子川:そのそも、この〈ASOBINOTES〉というレーベルは、バンダイナムコエンターテインメントのIPを使って音で遊ぶレーベルを作ろうということで立ち上がったんです。。普通のアーティストを育てるレーベルとは違って、もともとのキャラクターを使ってアソビの視点からリミックス楽曲やカヴァー楽曲から作ることからはじめたんです。もちろん弊社には他のキャラクターIPもあるんですけど、権利の問題で自由にできる部分も限られてしまって。そこでもっと自由にやるために、自分達でキャラクターIPを1個作ってみようということになって、スタートしたのが電音部です。
ーなるほど。そもそもの電音部のコンセプトはどういうものなんでしょう?
石田:まずは音楽とイベントというところからメディアミックス展開をやっていこうと。キャラクターデザインをイラストレーターのMika Pikazo先生に描いていただいています。音楽に関しては作家の方々に、ダンス・ミュージックとして聴けるものを制作してもらっています。そして、現在ある、また未来に起きるであろうテクノロジーと掛け合わせてコンテンツを作っていこうというのがコンセプトです。
ーダンス・ミュージックを主体にしようとしたのはなぜだったんですか。
子川:単純に僕が好きだったから(笑)。「アニON」というコンセプトカフェで、キャラクターの関連楽曲を使ったクラブ・イベントを僕と仲間たちでプロデュースしていて、そのときからクラブ・ミュージックに関係するキャラコンテンツを作れたらなと思っていました。
ーダンス・ミュージックという軸からキャラクターが生まれていったんですね。電音部はファンメイドの、いわゆる二次創作コンテンツについての規約がかなり寛容なのがおもしろいなと思ったんですが、それはどういう理由からですか?
子川:あくまで個人的な意見ですけど、二次創作に関してダメだよっていう必要がないと思っています。ある程度の基準はガイドラインに設けていますが、かなり緩くしてます。それこそ昔は、新譜が出たらアーティストの方からDJさんに「かけてください」ってレコードを配っていたという話を聞いて。そっちの方がおもしろいなと。なんだったら電音部が新譜を出したときは全国のDJさんにかけてほしいです。聴いてもらってなんぼなんで(笑)。規約を厳しくするより「電音部いいよね」っていってくれるユーザーさんが増えることに意味があるかなと。
石田:我々はエンターテイメントの会社なので音楽をきっかけに広げていく予定です。なので、こういうところを我々が率先してやっていきたいです。
子川:リミックスとかもバシバシやってほしいし、やっていいんだよって姿勢を見せるために、リミックスしてもらったのを公式アカウントでRTしたりしてますね。
おもしろいことを知ってもらう架け橋になれば
ーなるほど。電音部の物語、世界観はどういったものになっているんでしょうか。
石田:舞台はAIやホログラムなどの技術が進歩した近未来です。そこではそれぞれがDJ活動や作曲活動をする電音部が流行っているという設定です。電音部自体は学校対抗でバトルする部活ものというかたちをとってます。
ーそれぞれの学校で特徴が変わっていますよね。
石田:エリアごとに楽曲の雰囲気とかを分けています。エリアに根付いて雰囲気を変えた楽曲を作って、学校や背景、町並みを合わせた形で展開してます。一応、東京が舞台になっているのは、区画内で部活やってるというのを見せたくて(笑)。地区大会みたいなイメージですね。
ー各エリアの特徴はどういうものから決まっていったんですか?
石田:アキバは主人公的なユニットにしたかったんです。だからビジュアルもはっきりこれまでの学園アニメっぽくして。ハラジュクは「カワイイ」を基本にしているんですけど、不気味な雰囲気も取り入れてかわいいだけじゃないユニットになってます。アザブに関しては、お金持ちでシティ感があるシティポップを中心にした音楽と、お金持ちの雰囲気があるキャラクターになってます。シブヤは強豪校という設定で、ここにはVTuberさんも加わってもらってます。
ーアキバは〈ディアステージ〉所属のアイドルさん、シブヤは〈にじさんじ〉所属のVTuberさんという風に、それぞれのエリアで声優さんの事務所も違うのはどういう理由からでしょう?
石田:これは各地域に特徴を持たせようというところから、三人同じ事務所さんでやるのもおもしろいかなということで、音楽性とキャストさんの雰囲気を合わせて選んでいった感じです。最初からチームワークみたいなことは重視したいねと話してました。
子川:アキバはディアステージ様の店舗があるのでお声がけしました。ベストは実際のエリアに各事務所さんがあればよかったんですが、そこまで上手くはいかず(笑)。あと、VTuber界隈ってクラブミュージックと近しいところも実はあったり。
ーそれぞれのエリアで声優さんはもちろん、アイドルさんやVtuberさんが参加しているのが電音部のおもしろいところだと思っています。
石田:クラブ・カルチャーの魅力のひとつとして、クラブという場所で全然知らない違うアーティストを知ることがあるじゃないですか。そうやっていろんなカルチャーをまたいでやれるといいのかなと。声優さんをきっかけに他の作品を知ってもらうこともできますし。アイドルを知らない方が、アイドル・カルチャーを知るきっかけにもなる。電音部のキャストきっかけでおもしろいことを知ってもらう架け橋のようになれるといいなと。クラブ・カルチャーが持ってる文化感が作品全体で伝わればいいなと思っています。
子川:DJって曲をかけて繋ぐ中で、知ってる音楽をかけて盛り上げるのは勿論、自分が紹介したい音楽をかけるじゃないですか。作品としてもその役割を持ちたいんですよね。電音部の曲を聴いて、ケンモチヒデフミさんの曲にハマって水曜日のカンパネラを見つけるみたいな。勿論、逆もあると思います。ユーザーにとっても新しい発見があるといいなと思って。
ーひとつのところから様々な出会いに繋がっていったり、文化が混ざりあったりするのは、まさにクラブやDJのカルチャーっぽいですよね。
子川:音楽だけじゃなくて、いろんなカルチャーでそれができたらいいなと思っています。
石田:もちろん新しいものだけではなく前の世代のものを入れ込んで、どの世代にも楽しんでもらえて発見があるような形にするのも理想ですね。
相手を潰すよりは互いに認め合っていくようなストーリーに
ーでは、次は電音部の音楽について訊いていきますが、楽曲についてはどのようにして特徴を分けていったんでしょうか。
子川:まず、楽曲の雰囲気として、アキバは主人公として最初に発表する予定だったので、他のアイドル・コンテンツから流れてくるお客さんが聴いたときに「これは自分向けのコンテンツじゃないな」ってならないような雰囲気にしたかったんです。でもしっかりした四つ打ちのダンス・ミュージックにはしたくて。ハラジュクは音としてfuture bassっぽいものにしようというものは決まってたので、いわゆる原宿感みたいな感じにしようと。アザブは、おしゃれな1980年代感のある曲が欲しくて、シティポップ的な雰囲気を表現したいなと。そして、シブヤはちょっと派手めな感じでイメージしています。最初のイメージと少しズレてきたんですけどね(笑)
ー楽曲を発表してからの反応はどうだったんでしょう。
子川:まずアキバの3曲を発表する前は不安な部分もあったのですが、全然大丈夫でした!。3曲それぞれ方向性が違うんですよね。しかもそれぞれのクオリティが高い。そこを打ち出せたのはよかったと思います。
石田:キャラソンとしても成立してるし、ダンス・ミュージックとしても優れてるので、「キャラクターの解像度が高い」という反応はおもしろかったです。ソロ曲なので、それぞれのキャラクターが理解しやすいっていう。嬉しい反応でした。
子川:最初はプロジェクト・メンバーに「ソロ曲はやめたほうがいい」と言われたことがあって。でもキャラクターの個性をイメージさせやすいし、ソロ曲を中心にしてて良かったなと思います。それが解像度の高さにも繋がっていったのかもしれないですね。
ーでは、最後に電音部の今後について訊かせてください。
子川:いま配信されているのはそれぞれのソロ曲なんですけど、今後はエリア曲も入れていく予定です。
石田:あらすじの前提となるストーリーラインがあるんですけど、先のコンセプトが「ダイバーシティ」なので、各エリアで戦いはするけど、お互いのDJの試合を通して、「いろんな音楽の学校も素敵だよね」って方向に持っていきたいなと思ってます。部活動として一年に何度も試合があるんですけど、相手を潰すってよりは互いに認め合っていくようなストーリーにしたいです。
ー今後はイベントもやっていく予定でしょうか。
子川:コンポーザーも呼んでちゃんとしたクラブ・イベントや、声優さんが歌うライヴなどもやりたいなと思ってるので、いまは演出の仕方を考えてます。リアル・イベントでホログラムを出すとかもやりたいなと思ってます。新しいテクノロジーを組み合わせつつできればいいかなと思います。
ーエリアは広がる予定はありますか?
子川:絶対やりたいです。どこがいいかなと思ってます。アサクサは話に出たよね。
石田:バンダイナムコサウンドチームがあるからって理由でモンゼンナカチョウも出ましたね(笑)。
子川:あとユーロビートはやりたいので、そのためのエリアは作りたいかなと思ってます。あとは、リミックスをしてもらった作家さんから抜擢するみたいなことやってみたいです。実はそれはいちばんやりたいことかもしれないです。僕自身も知らない作家さんがたくさんいるし、そういう中でいいなと思った人にはお声がけしたいですね。
電音部の楽曲はこちらで配信中!!
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