国内インフルエンサーマーケティングのパイオニア「UUUM」の裏側 クリエイターと企業PRの“ミスマッチを防ぐ”アイデアとは
今年で創業から12年目を迎え、国内でインフルエンサーマーケティングの先駆者として10年以上の実績をもつUUUM。クリエイターのキャスティングだけでなく、キャスティング可能領域も日本最大級の同社は、長きにわたるノウハウを活かし、プランニングから入る代理店的な立ち位置でいまなお成長し続けている。
しかしその成長の裏では、日々時間に追われ、多くの実績や知見を活かしきれていないという営業組織の課題も。そういった営業チームの課題を解決するべく、2023年に発足したのが、今回インタビューを実施したマーケティングチームだ。
本稿では、営業組織を支えるマーケティングパートナーユニット マーケティングチーム チームリーダー・犬飼ひかり氏、松田航平氏、米子恵氏を迎え、同社のインフルエンサーマーケティングを司る営業チームが抱えていた問題とその解決策、昨年新たにはじめたセミナーを通したリブランディングについて話を聞いた。
クリエイターという“人”を商材とする課題
ーーはじめに、マーケティングチームの事業内容を教えてください。
犬飼ひかり(以降、犬飼):UUUMはクリエイター事務所としての認知度が高いと思いますが、広告領域もまた、注力しているところです。私たちはその事業展開のなかで、インフルエンサーマーケティングの営業部署のなかに所属しているチームです。チームができた2023年4月以降、顧客拡大や顧客管理、提案力と振り返りの質、リピート率を向上させるという営業活動の全工程における課題を解決し、売上の向上を目指すことをゴールとしています。
ーーマーケティングチームが発足してから1年半以上経ちますが、発足の経緯はどういったものだったのでしょうか?
犬飼:UUUMは昨年10月に12期に入りましたが、インフルエンサーマーケティングも10年以上取り組んでおり、国内では先駆者という立ち位置にいます。ご存知の通り、インフルエンサーマーケティングは市場が拡大しており、需要も高まるなかで、ノウハウや実績、データが効率よく活用しきれていないという課題がありました。データや実績が属人的にならないよう、会社としてそれを活かしていけるようにという意図があり、そこに対応するためのチームとして発足しました。
ーーインフルエンサーマーケティング事業を発展させていくために重要なチームなんですね。実績やデータがうまく活用できていなかったということですが、具体的にはどういった課題がありましたか?
犬飼:営業組織のなかには、直接クライアントとやり取りするチームと代理店経由のチームがあり、直クライアントチームはゲームや美容、ファミリーなど、ジャンルに特化したチームがあります。営業チームが大きくなっていくなかで、向き合う相手先やクライアントのジャンル、チームもさまざまになり、横軸で情報がシェアしきれていなかったんです。
取り扱っているのがクリエイターという“人”なので、好みが変わっていきますし、普段使っている商品も変わっていく。そのなかで彼らのブランドへの気持ちや親和性も日々移り変わっていて、営業組織のなかでその変化を知っている人、知らない人というばらつきがありました。弊社に所属しているクリエイターにはバディと呼ばれるマネージャーがついていますが、バディと営業部隊チームの会話のなかで、全クリエイターのそういった変化を随時吸い上げ、誰もが知れる状態にするというのは難しい部分がありましたね。
松田航平(以降、松田):クリエイターは毎日活動しているので、趣味やハマっていることがどんどん更新され、新しい話題が次々と生まれます。私は営業メンバーがクライアントによりよい提案をするための提案資料や事例集などの整備を担当していますが、クリエイターの情報を拾い、使いやすい形にしていくということは、クライアントや代理店への提案においても重要なポイントでした。
最初はYouTubeのデータ知識なしも…ツールで情報“格差”の解消へ
ーーそういった課題解決のために、動画内検索ツールを作成したという話をお伺いしたのですが、これはどういったツールなのか教えていただけますか?
米子恵(以降、米子):クリエイターが動画内で紹介するものや行く場所について、営業メンバーも日々追いかけますが、膨大な数の投稿のなかでどの動画で誰がその商品について話していたのかを把握するには限界があります。その悩みをきっかけに、YouTubeで誰がどの動画で、どういう発言をしていたのかというのを一括検索できるツールを用意しました。実際のツール開発は、社内のシステム部と連携して行ったので、マーケチームが担っていたのは営業側の意見を集約し、システム側と仕様をすり合わせ、ツールができた時には営業に使い方など含め周知する、という役回りです。
ーーすごく画期的なツールですね。私たちメディアも、どの動画でどう発言していたのか探す機会が多いので、あったら便利だなと思います。
犬飼:どのインフルエンサーがそのPR施策に適しているのか、根拠があるかないかでクライアントの反応がまったく違うので、インフルエンサーマーケティングにおいてこのツールは相当価値あるものなんです。インフルエンサーの選択肢が幅広いなかで、できるだけ親和性のある人に紹介してもらった方が視聴者に刺さるというのは、広告主に理解されてきています。普段から自社の商品を好きと発言してくれているクリエイターや、地元に住んでいるクリエイターなど、親和性が特に必要なときに便利なツールだと思います。それこそ、情報のばらつきをなくす、ひとつの手段だったと思います。
ーー営業チームの情報“格差”の悩みが一気に解決に向かったようですが、動画内検索ツールの開発は相当大変だったのではないでしょうか。
米子:私はもともとディレクションという案件進行の部署にいて、新卒2年目になるタイミングでマーケティングチームができ、異動してきたので、特にシステムの知識があるわけでもなく、YouTubeのデータ周りも特段詳しいわけではなかったんです。そのため、まずは各データがどういう定義で決められているのか、どのような見た目に整えれば営業メンバーにとって使いやすいのかというところから学んでいったのがすごく大変でした。開発側の意見と、営業側が本当に知りたいデータやその使い方のすり合わせをする立ち位置だったので、板挟みになったときもありましたし、知識がないだけに最適な答えがなかなか見つからないといった大変さもありました。
ーーたくさんの苦労を乗り越えてできたツールは、松田さんの担当されている提案書や事例集の整備でも、いい影響があったのではないでしょうか。
松田:はい、たしかに良い影響が出てきていると感じています。日々更新されるクリエイターの情報を営業メンバーがインプットしやすく、商談にも活用しやすい形に整えたり、クライアントとの接点を生むきっかけとなるようなメールを作成したりといったアクションが可能になったことは、小さいようで大きな一歩だと思います。こうした取り組みを積み重ねることで、少しずつ課題の解決に近づいているのではないかと感じています。
インフルエンサーマーケティングのプロモーションやクリエイティブは単なる商品の情報発信にとどまらず、クリエイターの日常に溶け込んだエンタメとして届けられるのが特徴です。そのため、この独自の訴求力をデータやファクトをもとに論理的に説明し、クライアントに納得感を持って伝えるにはテクニックが求められます。
僕は前職で広告代理店に勤務し、コンペでプレゼンをするという仕事をしていたのですが、営業メンバーの提案を見ていく中で、こうしたロジカルな伝え方の部分で自分が貢献できる余地があると感じており、そこにやりがいを持って取り組んでいます。