哲学

ダーウィンの危険な思想/ダニエル・デネット(続々々)

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2024/11/27/000000 ↓ 『ダーウィンの危険な思想』最大の成果は、「超越的・神秘的なものなどなくても人間は進化のアルゴリズムだけで出来上がる」というデネットの確信を私も改めて確信したことだ。しかしもう1つある…

ダーウィンの危険な思想/ダニエル・デネット

『ダーウィンの危険な思想』初めて読む。冒頭から、私が10年ぐらいずっと思案していることが、もののみごとに言語化されていた印象。ダニエル・デネットは私か! 昨年末に出た新装版。 《当初から、ダーウィンはニヒリズムという名の最悪の出し物を袋から取…

★なぜ世界は存在しないのか/マルクス・ガブリエル

『なぜ世界は存在しないのか』(マルクス・ガブリエル)ーー今さらながら読んでみる。大いに取り沙汰され、しかし遠巻きに眺めていたこの一冊だが、もしや私が本当に気になることの真芯を捉えていたのか? 『有限性の後で』を試しに読んだときと同じ、予定外…

★論理学(野矢茂樹)再読

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2024/06/17/000000 から続く ↓ 野矢茂樹『論理学』、最後は不完全性定理の解説。といっても、その解説の目的は《「鑑賞」である》と断っている。毎度うまいことをおっしゃる。 さてでは、その《鑑賞の最大のポイント…

論理は宇宙の法則ではないのか

「人間ならへそがある カエルにはへそがない それゆえ カエルは人間ではない」ーーこれは正しいが、それはべつに、人間やカエルの体を詳しく調べたから言えるわけではなく、人間やカエルの生物学的分類を知っているから言えるわけでもない。どうしたってこれ…

野矢茂樹『論理学』再読

論理は宇宙の法則ではないのか - 東京永久観光 ↓ 野矢茂樹『論理学』(1994年)を再読している。 なぜかは説得しにくいが、格別に面白い分野だ。 たとえば伝統的論理学では「文の基本型は主語+述語」「文は否定と肯定の2つの質をもつ」「文は すべて と あ…

進化論のロジック――更科功『進化論はいかに進化したか』

更科功『進化論はいかに進化したか』(新潮選書) 今西進化論を評した章が個性的で面白かった。 今西進化論は正統的進化論と異なり「個体ではなく種自体が進化する」という発想のようだ。そしてまた、種はどうも何らか必然的な理由で進化する、と考えたよう…

〈私〉の謎、それはじつは言語の謎だった!

私の世界は現象と言語でできている。「私の世界は現象と言語でできている」もまた言語だが。 ーーこんな感想を強く抱かせた。永井均『なぜ意識は実在しないのか』(改訂版) 〈私〉として指していたはずの謎はむしろ言語の謎だった… 《すべてを疑っても疑っ…

考古学と哲学

邪馬台国はどこにあったのか? 掘った所からは必ず何かが出てくる、 掘らない所からは何も出てこない。 ーー哲学もそうだと思われる。 掘れば掘るほど何か出てきてしまう、 ただし謎が終わることはなく、 むしろ謎は深まり、 さらに掘らなければ気がすまなく…

死に関する論考(青山拓央さんのnoteから)

《私の死後には、私の誕生以前とは異なり、私についての二人称の死を経験する人々が残されるだろう。つまり私の不在を、別れとして受け止める人々が残されるだろう。奇妙な言い方かもしれないが、このことによって、私は本当に死ぬことができる》 なるほど〜…

★読む哲学事典/田島正樹

『読む哲学事典』(田島 正樹):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部 ぎっしり積まれた冷凍食品から1つ取り出すのが通常の哲学事典だとすれば、これはまるでホテルの朝食バイキングに並んだ新鮮で温かいアラカルトを気の向くまま食べる感じ。素材2つの組み合…

★谷口一平「「マイナス内包」としての性自認の構成」

雑誌『情況』2024Winter号で、谷口一平「「マイナス内包」としての性自認の構成」を読んだ。高度な哲学知識が求められ私としては正確な把握に苦労するが、とても独創的で明晰な論だろうと感じる。 情況出版 “変革のための総合誌” この論文は、ジェンダーに関…

★NHK100分de名著 ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』

NHK100分de名著 ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』、テキストを読み終えた。とてもよくわかった。そして予定どおりとてもよくうなずけた。ローティ、いいね! 挿絵にあるローティの写真が、日曜昼間のドトールとかでコーヒー飲んでるおじさんぽいのも、…

★世界は「関係」でできている/カルロ・ロヴェッリ

カルロ・ロヴェッリ『世界は「関係」でできている』 https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818812021.html 量子力学をめぐって、いかに存在するかだのなぜ存在するかだの言ったけれど、また読むのはこうした一般書。とはいえ、このわりと薄い本は、基礎…

量子力学への期待

去年は高校の数学を最初から復習した。結局やはり量子力学とかをいつかはどうしてもはっきり知りたいわけで、それには物理学を少なくとも高校レベルから知らないといけないが、私の場合そのためにはさらに高校レベルの数学から知る必要があった。じゃあなん…

★実践! クリティカル・シンキング/丹治信春

論理学の本は、食パンを生でバターもつけず食べるようなものと思っていたが、カツオと昆布で出汁をとって味噌汁を作るようなものかと思い直した。ともあれ、愛好者の少なさと、裏腹の強さが、いつも思い浮かぶ。 筑摩書房 実践! クリティカル・シンキング /…

★心という難問/野矢茂樹 やっと感想

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2023/07/10/000000 からの続き ↓ 大事なメールほど返信が遅れるという法則がある。大事な書物も同じだ。感想がはなはだしく遅れる。今年は野矢茂樹『心という難問』がそうだ。もう秋も深まった。なんとか片付けるべし…

物理学vs.哲学

物理学vs.哲学のデスマッチ観戦中。 https://twitter.com/charis1756/status/1706111442913726805 「電子とは何か」のほうがむしろわかりやすく、手とは何かのほうがむしろわかりにくい、みたいなことになっている。 →(ちょっと関連)https://tokyocat.hate…

★訂正可能性の哲学ほか

東浩紀『訂正可能性の哲学』読書開始と時を同じくし、<25年後の『存在論的、郵便的』から『訂正可能性の哲学』へ>という著者参加のシンポジウムをオンライン視聴。興味深い新発見が多々。『存在論的、郵便的』の結末が奇異な切断に至ったわけもついに(?…

離散の量子と連続のイデア

離散の量子と連続のイデアでは「ソリが合いません」。だから「その説明はもはや諦めましょう」。しかしながら「量子論は間違っていないに決まっているのだから、イデア論が間違っているに決まっている」という前提に対し、ちょっと無駄な抵抗を試みたくもな…

★存在とは何か/小林康夫

『存在とは何か』(小林康夫)を読んでいる。哲学の人として知られる著者だが、存在の謎に迫る新しいカギを、思いがけず、物理学の理論に見出そうとしている。<よくわからないけど、どうしてもそんな気がするんです>と、まるで私に似た軽薄さや気弱さも垣…

★心という難問/野矢茂樹

「よく次々にいろいろ読むなあ」と自分で思いながら、野矢茂樹『心という難問』(2016)を読んでいる。<他人の痛みを知ることはできるのか>という謎が今度こそさっと溶けていく感。『語りえぬものを語る』(2011)が言語論の完成だったとすれば、こちらは…

哲学者と科学者の対論

まさに哲学者と科学者の対論と呼ぶべきか? 本格的で興味深い。 (引用)《論理の法則と、自然法則とは、その特性や身分が大きく異なる。これらふたつはレベルを異にしており、前者は後者に重要な意味で「先立つ」と言える》 note.com (引用)《まず何がAな…

数式で記述されること、言語で記述されること

「物理現象は数式で記述される」といったことがよく言われる。これって「ものごとは言語で記述される」というのと同じことなのでは? 「何を今さら」と言うかもしれないが、たった今あっと気づいた感じがしたので書いておく。 「宇宙の法則は数学で書かれて…

労働しないことの価値

1か月労働することで得られる金銭はどれぐらいか。恵まれた人でも100万円ぐらいだろう。では、1か月労働しないことで得られる価値はどれぐらいか。近ごろちょっとそれを実地に考えるような日々を送っているのだが、気分的には100万円相当を超えている。 人間…

★飯田隆『分析哲学 これからとこれまで』(続)

◎ https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2023/05/29/000000 から続く 飯田隆『分析哲学 これからとこれまで』、おおよそ読み終えた。 私がウィトゲンシュタインやフレーゲに反射的にのめりこんできたのは、「言語や論理には世界の構造が反映されているのか…

YouTubeで「数理論理学」をちょっと勉強(感謝)

「理論的に妥当な推論と、現象的に妥当な推論は、完全には重なりません」――世間の現実はたしかにそんなものだろうが、バイブルにする予定の論理学にそう言われてしまうと、明日からどう生きていけばいいのか、子羊は迷う…… www.youtube.com 「false positive…

★飯田隆『分析哲学 これからとこれまで』

飯田隆『分析哲学 これからとこれまで』。 繰り返し言ってきたことだけど、素人さん向けにもう1回まとめますよ、といった感じがして、ありがたい。 私が読んだところ<フレーゲはすごいです(偉大)><ウィトゲンシュタインは変わってます(特異)>という…

ChatGPT考(分析哲学、普遍文法、脱構築から)

猿みたいなものだった私たち人間が、むにゃむにゃと喋りだした。それを皮切りに、いつしか、たとえば概念記法(私たちがものを考えるときに従っているはずの<理屈の骨格>みたいなもの)をフレーゲが抽出した。ChatGPTも言葉を大量に読むことで、概念記法み…

フレーゲ『算術の基礎』読書中

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2023/03/02/000000 から続く 「4月」という文字がまだ見慣れない。 数は直観ではないとフレーゲは言い張るが、「4月」は直観ぬきに考えることはできないなあ。…と思いつつ、そもそも「April」と英語で言う人は、「4…