九州で第2の人口を擁する福岡・北九州市。しかし八幡製鉄に代表されるかつての重厚長大のイメージからなかなか脱却できないでいる。新たな1年、どんな動きや変化が現れるのか?北九州市の武内和久市長(53)に話を聞いた。

反転攻勢へ 社会増は実に60年ぶり

動き出した新しい年の抱負について「仕事始め式で申し上げたのが『心を動かす』。心を動かすような市政をやっていくことです」と語った武内市長が、2025年のスローガンに掲げたのが、市民や職員、あらゆる人の『心を動かす』ことだった。街の活性化や推進力のために、まずは人の心を動かそうというのだ。「市民の皆さんの心に、ハートに火をつけるような手をどんどん打っていきたい。これがまず大根本の今年の抱負です」。

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そんな北九州市に新年早々、大きな弾みが付いたのが実に60年ぶりに実現した人口の『社会増』だ。転入者が転出者を上回った。積極的な企業誘致をはじめ、若者向けの賑わい創出や定住促進に力を入れた成果が現れたといえる。武内市長も「これは本当に嬉しいし、ありがたいです」と素直に喜ぶ。「北九州市は60年間、人口の転出の方が多い町だった。これが60年ぶりに転入が超過した。これはもの凄いビッグニュースですし、大きな勇気が得られる、北九州市の反転攻勢をしていく、その“狼煙”が明確に上がったと思います」。

武内市長が、新年の目標としてまず挙げたのは『女性』。「新しい北九州市をつくっていきたい。そのために1つ、切り口になっていくのは、やはり女性。子育てや介護やさまざまなことを現実に担ってらっしゃる女性にとって北九州市は本当に心地いい街なのか、女性にとって働きやすい環境なのか、ここの問いに正面から向き合っていく最初の1年にしていきたい」と決意を語った。

女性にとって北九州市は心地いい街なのか?
女性にとって北九州市は心地いい街なのか?

2つのキーワード「EV」と「半導体」

そして2025年、歴史的な転換点にしたいと力を込めた2つのキーワードがある。「素晴らしい産業の蓄積は、ものづくりの街としてあるんですが、さらに脱皮していくためのキーワードは、EV=電気自動車と半導体。この2つは大きなキーワードになっていきます。EVと半導体の分野でも明確な進展が進むように今年、力を入れていきたいと思います。期待していただきたい」と武内市長は胸を張る。

北部九州に集積した自動車産業の業界では、世界的な脱炭素の流れのなかで、電気モーターを動力源としたEVへのシフトが加速している。

また半導体を巡っては『後工程』と呼ばれる組み立てや検査を受託する最大手の台湾企業「ASE」が、市有地取得の仮契約を結ぶなど北九州進出に向けた動きが出てきている。

「確かな技術力、担い手がいるのが北九州市です。ただ世界も変わっています。時代も変わっています。EVや半導体中心にどんどん変わっているなかで、北九州市の経済産業も蛇のように脱皮して成長していかなきゃいけない。その明確な形を何としても打ち出したいと思っています。歴史的な大きな転換点となるような動き、これを今年、見せていきたい、打ち出していきたいと思っています」と武内市長は2つのキーワードの持つ意味を語った。

地域コミュニティーの再構築へ

2月からは市政3年目に入る武内市長。解決すべき課題として挙げたのが、1つは60年ぶりの社会増にも表れた成長の勢いを確実にすること。そしてもう1つは、高齢化や担い手不足で希薄になった地域コミュニティーの再構築だ。

「社会動態がプラスになったと言っても、この流れをしっかりと確実なものにしていく。あともう1つは、地域についてもこれから本格的に本腰を入れていきたいと思います。去年は非常に痛ましい事件などもありました。そういったなかで地域の繋がりというか地域の安全安心をどう作っていくのか。ここにも正面から向き合いどういうことができるのか。それをしっかりと紡ぎ出していく年にもしていきたいと思います」。

『心を動かす』をスローガンに始まった2025年の北九州市政。武内市長が歴史的な転換点にしたいとしている「EV」と「半導体」は、どちらも技術立国の日本が国を挙げて力を入れる成長分野。そこに北九州市がどう食い込んでいくのか?今後も北九州市から目が離せない。

(テレビ西日本)

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