川内原発、冬にも再稼働 規制委が審査書を了承
原子力規制委員会は10日、九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全対策が新規制基準を満たしているとの審査書を正式に了承した。再稼働に向けた安全審査の合格第1号となる。一般からの意見募集では火山の噴火を心配する意見などが寄せられたが、可能性は「十分小さい」などとして結論を変えなかった。政府は地元自治体の同意を得やすくするための支援を進めており、今冬にも再稼働する見通しだ。
規制委は申請を受け昨年7月に川内原発の審査を始め、九電が示した地震・津波対策や重大事故への対応策などを検討してきた。九電が過去の地震を考慮して川内原発の最大の揺れは620ガル(ガルは加速度の単位)、最大の津波の高さは6メートルと見積もったことについて、規制委はいずれも妥当と判断した。炉心が損傷するような重大事故への対策も十分だとし、審査書で新基準に「適合している」と結論づけた。
残る手続きとして、九電は川内原発の改造工事の認可を規制委から取り付け、規制委による現場の検査も受けなければならない。すべての事務的な手続きを終えるには数カ月かかるとみられる。
7~8月にかけて実施した国民からの意見募集では「火砕流が到達する可能性がある」などの意見が寄せられた。規制委は「火山事象が敷地に到達する可能性は十分小さい」などと回答した。
また「放射性物質の大量放出をもたらす事態を検討しておらず防止策もない」との意見もあった。これについては「総放出量はできるだけ小さくとどめるものであると確認している」などと説明、審査書案の表現の一部を変更するにとどめた。
規制委による安全審査が終了し、今後の焦点は自治体や政府の再稼働に向けた判断に移る。再稼働にあたっては、鹿児島県など地元自治体の同意が必要だ。規制委は10月中旬以降、川内原発周辺で開く住民説明会で審査の内容や安全対策などを説明する予定だ。再稼働は冬以降になりそうだ。政府は規制委の審査を合格した原発から順次稼働させる方針だ。
川内原発1、2号機は1984年と85年に相次ぎ運転を開始し、2基で九電の全電力供給の1割弱をまかなえる。稼働すれば西日本の電力事情は改善しそうだ。これまでに10電力会社が13原発20基について再稼働に向けた安全審査を規制委に申請している。
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