EU・中国「パリ協定を推進」 世界けん引アピール
首脳会議で米離脱協議
【ブリュッセル=森本学、北京=原田逸策】欧州連合(EU)と中国は2日、ブリュッセルで首脳会議を開き、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の実行へ協力関係を強化することで一致した。トランプ米大統領の協定離脱の表明を受けて温暖化対策が漂流するリスクが高まるなかで、世界のけん引役を担う姿勢をアピールする。ただ通商問題を巡る協議では溝が埋まらず、予定していた共同声明の採択を見送るなど足並みの乱れもにじんだ。
「EUと中国は地球全体に対する責任を示した」。首脳会議後に記者会見したEUのトゥスク大統領は「アメリカがいようといまいと、気候変動との戦いは続く」と強調。中国と温暖化対策での協力強化で一致したと成果をアピールした。
パリ協定を巡る米国の離脱表明直後の開催となった今回の会談は、「責任ある大国」の印象づけを狙う中国にとっては格好の機会となった。中国は昨年の20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国としてパリ協定の11月発効を主導。米国との共同批准の表明で早期発効への流れを作り出した。
ただ中国は温暖化対策のけん引役として振る舞っても、さらに大きな責任を負うことには後ろ向きとされる。中国の最優先課題は国内の大気汚染改善で、その結果として温暖化ガスが減り、パリ協定で約束した対国内総生産(GDP)比の排出量を減らす目標も達成できる見通し。しかし経済成長の足かせになる排出総量の削減には慎重な姿勢を取る公算が大きい。
一方、欧州側は中国との連携で温暖化対策での主導権を回復し、トランプ米政権への対抗を狙う。昨秋のパリ協定の発効を巡っては同時批准で流れを生んだ米中の後手に回って存在感を発揮できなかった。
ひとまずパリ協定の実行へ連携を演出した中国とEUだが、先行きには不安も残す結果となった。当初、首脳会議では全9ページの「気候変動とクリーンエネルギーに関する共同首脳声明」を採択し、米離脱表明後のパリ協定の実現へ主導権を握る姿勢を一緒に打ち出す方針だった。
しかし結局、共同声明の採択は見送った。EU関係者によると、首脳会議ではパリ協定の実行に向けた協調では一致したが、通商問題を巡ってEUと中国の溝が改めて鮮明になったためだ。
中国側はEUに対し、世界貿易機関(WTO)における「市場経済国」の地位を認めるよう要求したが、EU側はさらなる市場開放を要請。そのうえで中国側に鉄鋼業の生産能力の過剰問題への取り組み強化を迫った。「立場の違いは狭まりつつあるが、まだ埋まっていない」。ユンケル欧州委員長は共同記者会見で険しい表情を浮かべた。