子供の貧困に政策追いつかず 衆院選、親ら支援充実求める
今年7月、「6人に1人の子供が貧困に陥っている」とのデータが公表され貧困対策の必要性がクローズアップされた。終盤に入った衆院選では多くの政党が子育て家庭の支援策を公約に掲げており、母子家庭など厳しい環境で暮らす親子や支援団体などは「実効性のある施策を」と強く願っている。
「お母さんがしんどそうだから」。近畿地方の自治体に住む小学6年の女子児童(12)は学校が終わると近くの支援施設に顔を出す。母子家庭で母親が病気で働けず、生活保護を受給しており、この施設で夕食の提供を受けることも多い。
来春に中学進学を控えるが、用具などにお金がかかるため部活動の参加は諦めている。施設の担当者は「本当はみんなと同じように部活を楽しみたいはず。他の家庭の子にとって当たり前の環境が貧困家庭の子供には与えられない」と話す。
厚生労働省が今年7月にまとめた2012年の国民生活基礎調査で、世帯所得が中央値の半分を下回る額で暮らす18歳未満の子供の割合を示す「子供の貧困率」が16.3%に達した。09年の前回調査より0.6ポイント悪化し過去最悪を更新した。
厳しい環境下で子供を育てる親は悩んでいる。未婚で長女を妊娠、父親に当たる男性から暴力を振るわれ別れた兵庫県川西市の女性(36)は「週4日は非常勤の事務職、残りの1日は飲食店で働くが月収は約15万円。家計は常に苦しい」。中学2年の長女(14)は来年、受験生になる。無理をして塾に通わせ始めたが、毎月約3万円の月謝が家計を圧迫する。
女性は「娘には申し訳ないが大学に行かせるのは金銭的に難しい。塾にもいつまで通わせられるか……」と話す。「無償の学習支援などを拡充してほしい」と切望する。
安倍政権は今年8月、貧困家庭の子供の支援策をまとめた「子供の貧困対策大綱」を閣議決定。「貧困の世代間連鎖を断ち切る」として、ひとり親家庭の支援などを盛り込んだ。野党も今回の衆院選で、高校無償化制度の確立など、親の収入にかかわらずに子供が学べる環境づくりを訴える。
支援の現場からはきめ細かな対応を求める声が上がる。ひとり親家庭の子供の学習を支援するNPO法人「キッズドア」(東京・中央)の渡辺由美子理事長(50)は「行政の窓口は教育、福祉など分野ごとに縦割り。ワンストップで受け付ける窓口を置くなど支援体制を整えて」と求める。
生活支援などを行うNPO法人「山科醍醐こどものひろば」(京都市)の村井琢哉理事長(33)は「無理をして体調を崩し、一段と貧困に陥る人も少なくない」と指摘。「早め早めの支援が自立につながる。政治家は現状に根差した対策のアイデアを競い、実現につなげてほしい」と話した。