イラン、査察一部停止警告 核合意巡り英仏独と応酬
経済支援引き出し狙う
【ウィーン=共同】イラン核合意の当事国がウィーンで6日行った協議で、イランは核合意からの段階的な逸脱の第5弾として、国際原子力機関(IAEA)による査察受け入れの一部停止を警告した。外交筋が明らかにした。欧州の経済支援を引き出すための脅しとみられ、来年1月上旬までに欧州側が対応できない場合、実施に踏み切る恐れがある。核合意は崩壊寸前に追い込まれており厳しい局面を迎えた。
外交筋によると、英仏独は協議で、国連の対イラン制裁復活につながる「紛争解決手続き」開始の可能性に言及した。核合意の全面履行を求める英仏独と、米国の制裁の影響を緩和する支援の具体化を求めるイランが激しい応酬を繰り広げた。
6日に行われたのは英仏独中ロとイランが合意の履行状況を話し合う合同委員会の次官級協議で、イランは当初の方針通り、第4弾として11月に中部フォルドゥでウラン濃縮を再開した措置を説明した。欧州などが来月上旬までに経済支援策をまとめなければ、第5弾としてIAEAの抜き打ち査察を認める「追加議定書」の暫定履行を停止する用意があると通告した。
中部ナタンズとフォルドゥのウラン濃縮施設に対する査察を制限する選択肢があることも伝えた。
協議でイランは、核合意で約束されたはずの経済的恩恵が得られていないと英仏独を非難。「我慢は限界に達している」と不満を表明した。
欧州側が言及した紛争解決手続きについて、イランは「核合意を離脱する理由になり得る」(政府当局者)と断言。6日の協議でも、手続き開始は「強い反発を招く」と指摘し、英仏独をけん制した。
核合意の瓦解を回避したい英仏独は、手続き開始の是非について、イランによる第5弾の逸脱措置を踏まえて決定するとの観測が出ている。