論文「不正」告発側に賠償命令 東北大前学長が勝訴、仙台地裁
論文に不正の疑いがあると告発されて名誉を傷つけられたとして、東北大の井上明久前学長が、告発した日野秀逸名誉教授ら4人に1650万円の損害賠償を求め、名誉教授らが反訴して約2400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(市川多美子裁判長)は29日、名誉教授ら4人に計110万円の支払いを命じた。反訴は棄却した。
判決理由で市川裁判長は「論文に直ちに捏造(ねつぞう)、改ざんがあるということはできない。(名誉教授らは)井上前学長の社会的評価を低下させた」と述べた。論文の不正の疑いについては「学術論争において決着を図るべきだ」との判断を示した。
判決によると、日野名誉教授らは2009年、井上前学長が発表した金属ガラス作製に関する研究論文に、捏造やデータ改ざんの疑いがあるとする告発状を東北大に提出。その全文を名誉教授らが管理するホームページ上に掲載した。
井上前学長側は「告発文は虚偽の内容で、研究に不正が認められる余地はない」と主張。
日野名誉教授らは「論文の方法で金属ガラスができないことは明らか。前学長の提訴は不正追及の妨害が目的で極めて不当」と反訴していた。〔共同〕