モンハンやラブプラス…新作ソフトで始まる3DSの逆襲
東京ゲームショウ2011
続々と公開される新作ソフトに、ゲーム業界の視線が集まった――。15日に幕張メッセ(千葉市)で開幕した「東京ゲームショウ2011」。ゲームビジネスなどの関係者に限定して公開された16日までの2日間は、ソーシャルゲームが注目を集める一方で、家庭用ゲーム機のブースにできる長蛇の列も目を引いた。
ゲームショウに先立ち、任天堂がてこ入れ策を発表した携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」の新作ソフトを会場で体験してみた。
拡張スライドパッドで高い操作性 「モンスターハンター3G」
ゲームショウ2日目の16日午前。カプコンの「モンスターハンター3(トライ)G」ブース前では、行列が途絶えることなく続いていた。ブースでは13日の発表会で紹介された「ニンテンドー3DS専用拡張スライドパッド」付きの3DSを使って、4人一組の"狩り"を体験できる。
アクションゲーム「モンスターハンター」シリーズは累計約1800万本の売り上げを誇る大人気ソフト。ソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」で発売された前作「モンスターハンターポータブル3rd」はおよそ470万本を売り上げ、PSP本体の売り上げ増にも貢献した。
3DS版「モンスターハンター3G」を試すには、ブース前で配布される整理券が必要になる。ゲームショウで初公開という事情もあってか、初日は約60分、2日目の16日も開場から約90分ほどで整理券の配布が終了した。
新作と同じ日に発売される専用拡張スライドパッドを本体に取り付けることで、両手で持ったまま左右のボタン操作が可能になる。
「前作でPSPの操作感に慣れているユーザーも、違和感なく遊べる」(広報・IR室の小林智絵美氏)。
ゲーム関連のデザインを手掛ける天野秀彦さんは、3DSで"狩り"を体験したあと「操作性やグラフィックの美しさに不安を抱いていたが、とても満足した。3DSは持っていないが、ソフトと併せて購入したい」と話した。
シンプルな操作でターゲット拡大 「初音ミク」
人気キャラクター「初音ミク」をモチーフにしたセガのリズムアクションゲーム「Project mirai(仮)」は、画面内のボタンを音楽に合わせながらリズミカルに押していくゲーム。初心者でも楽しめるシンプルな操作性が特徴だ。
ブースで体験できるのは開発版だが、2012年3月発売予定の製品版にはAR(拡張現実)機能を搭載する。3DSのカメラ機能でARカードを読み取ると、画面から立体的に飛び出した初音ミクが音楽に合わせて踊り出す。
モーションキャプチャーで体の動きを記録するために、マーカーを装着して演技する「モーションアクター」の細川桃仁さんは、3DSを持っているもののソフトの少なさが不満だった。「初音ミクのようなかわいらしいキャラクターで遊べるソフトが、もっと増えるとうれしい」と笑顔を見せた。
「NEWラブプラス」はジャイロセンサーでよりリアルに
12月8日発売予定のコナミのコミュニケーションゲーム「NEWラブプラス」のブースでは、体験中のユーザーがそこかしこで3DS本体を頭上に持ち上げたり、持ったまま回転したりする不思議な光景が見られた。
これは3DSの「ジャイロセンサー」機能と連動した操作を体験しているため。本体を上下左右に動かすと、画面内の「彼女」の背後に回ったり、異なるアングルから眺めたりできる。
本体を頭上に持ち上げて下から見上げたら「彼女に怒られた」(体験中の男性)など、ゲームキャラクターとのリアルなコミュニケーションを楽しめる。
新作ソフトで巻き返しなるか
3DSの販売台数が伸び悩んだ任天堂は、8月に本体の希望小売価格を1万円値下げした。今後発売予定のタイトルを20以上そろえるなど、てこ入れ策の真っ最中だ。
任天堂はゲームショウに出展しないが、発売予定の3DSソフトへの期待もあって、他の新作ソフトの体験ブースでも行列ができていた。ARやジャイロセンサーといったハードの機能と、固定ファンを持つソフトのパワーの組み合せには依然力強さが感じられる。
ソフトを発売するメーカー側も強気の姿勢を崩さない。「ハードありきではなく『モンスターハンター』というコンテンツ自体の魅力で勝負する」(カプコンの小林氏)、「ARで表現される初音ミクのかわいらしさで、ターゲットを女性にも拡大していく」(セガコーポレート本部広報部の長澤陽子課長代行)。
3DS値下げ後の販売台数は伸びを見せているが、同社の株価は9日から16日まで6営業日続落し市場の評価は厳しい。それにも関わらず、岩田聡社長は日経新聞の取材に対して、スマートフォンなどへのゲーム配信は「まったく考えていない」と言い切る。
まずは年末以降、続々と発表される新作がどう評価されるか。その結果によって、任天堂が再び輝きを取り戻せるかどうかが決まる。
(電子報道部 富谷瑠美)