北朝鮮ミサイル、発射情報なし 日米韓なお厳戒
発射予告期間入り
【ソウル=小倉健太郎】北朝鮮が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルの発射予告期間が10日午前7時(日本時間同)に始まったが、日本の首相官邸対策室によると同日正午までに発射情報はなかった。北朝鮮は8日、発射時期の調整を検討していると発表したが、その理由は説明していない。「見送り」の背景は不明だ。日米韓など関係国は情報分析を急ぎつつ、発射強行に備えて厳戒態勢に入った。
北朝鮮が国際機関などに通報した予告期間は22日まで、時刻は毎日午前7時から正午の間に南方へ発射するとしている。
技術や天候説
朝鮮中央通信によると朝鮮宇宙空間技術委員会の報道官は8日、「打ち上げ準備は最終段階」としたうえで「一連の事情が生じ、時期を調整する問題を慎重に検討している」と述べた。ただ「一連の事情」が何かは説明していない。
韓国・聯合ニュースによると韓国政府関係者は9日、発射場がある東倉里(トンチャンリ、北西部)の「西海衛星発射場」付近の状況について「8日昼から(発射準備に)異常な兆候があった。一連の活動をすべて中断している」と話した。
一方、韓国紙の朝鮮日報は10日付で、韓国政府筋の話として「8日に3段ロケットの3段目を新たに発射場へ緊急輸送した。交換後に発射準備を再開する可能性が大きい」と報じた。
もし発射を延期する場合、電気系統やミサイル制御など技術的な問題が生じたことが想定される。韓国気象庁によると発射場付近の天気は良好だが零下10度以下とされ、強風や積雪も含めて天候面で発射を見合わせている可能性もある。
首相「万全期す」
予告期間中の17日には金正日総書記死去から1年を迎える。今年4月には発射を失敗しており、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が2度続けて失敗することを恐れて慎重になっているとも考えられる。
北朝鮮は発射中止とは言っておらず、関係国や国際機関にも延期などを通知していないもよう。ミサイル本体に液体燃料を注入すると数日以内に劣化してしまうが、まだ本体への注入は確認されていない。2009年4月と今年4月の過去2回も、予告初日は発射を見送った。
このため関係国は10日、予定通り発射強行に備えて厳戒態勢に入った。政府は、野田佳彦首相や関係閣僚が同日午前7時前に首相官邸や各省庁入り。首相は官邸で記者団に「警戒監視に万全を期していく」と述べ、執務室で情報収集と分析にあたった。
藤村修官房長官は記者会見で「引き続き(発射)中止を求めるとともに、不測の事態に対応できるよう緊張感を持って対応している」と強調。森本敏防衛相は省内で記者団に「北朝鮮から正式な通告や発表がない限り、現在の態勢を維持する」との考えを示した。
日米は日本海や東シナ海に迎撃ミサイルを搭載したイージス艦を展開。沖縄県や首都圏の計7カ所に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備した。聯合ニュースによると韓国軍も黄海にイージス艦を複数配置。ミサイルの1段目など部品が落下すると予想される地点で待機し、発射されれば軌跡を追跡する。