タイ、中国に仲介求める動き カンボジアとの国境紛争で
【バンコク=高橋徹】カンボジアとの国境紛争の局面打開に向けタイが中国に仲介を求める動きが表面化してきた。中国のカンボジアに対する影響力を利用し、タイが望む2国間協議を実現する狙いとみられる。一連の紛争では東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のインドネシアが仲介役を務めてきた。タイが議長国の頭越しに中国への依存を深めれば、ASEAN内で不協和音が生じる可能性がある。
タイ外務省のティーラクン事務次官が26日、中国の菅木、ベトナムのンゴ・ダク・タン両駐タイ大使に、カンボジアへの働き掛けを要請。中国とベトナムは経済援助などを通じてカンボジアと良好な関係にある。菅大使は「中国は状況を注意深くモニタリングしており、手助けする用意がある」と応じたという。
一方、タイのプラウィット国防相は27日から4日間の日程で訪中。梁光烈国防相とも会談する。訪問は以前から予定され、中国の軍備視察などが目的だが、国防相会談の中でタイ側が仲介を要請する可能性がある。
一連の国境紛争では、多国間での協議や監視団派遣を求めるカンボジアと、2国間での協議を主張するタイの間で意見が対立。2月下旬にジャカルタで開催したASEAN緊急外相会議では、ASEANではなく議長国インドネシアが前面に出て単独で監視団を編成し、2国間協議を仲介することで合意した。
双方の顔を立てた格好だが、監視団派遣などに手間取るうちに新たな交戦が発生。インドネシアのマルティ外相は25日に両国を訪れ停戦仲介にあたる予定だったが、直前に訪問を取りやめた。
国境地帯での交戦は27日で6日目に入った。タイ軍によると26日夜から断続的に続いた戦闘で、タイ側の市民1人が死亡。今回の交戦で民間人に死者が出たのは初めてで、両国合わせた死者数は14人となった。
タイ国防省によると、プラウィット国防相は訪中後にカンボジアのティー・バン副首相兼国防相と会い、停戦協議に臨むとしている。